フェラーリ専門ショップを決意するまで│雑誌で見たテスタロッサの低さがナカムラの人生を変えた


 
そんなときにテスタロッサに出会ったのだ。ナカムラ、32歳。こうと決めたら即行動する男である。テスタロッサを販売している店に足しげく通っては、フェラーリの本を読みあさった。そして運命の師に出会う。
 
エンツォ・アンゼルモ・フェラーリ。伝説のコメンダトーレだ。エンツォもレーシングドライバーから"クルマ屋"に転じた男だった。自分の境遇とシンクロした。
 
以来、エンツォが上司となった。師の人生哲学を知れば知るほど、この人が世に送り出した車はたとえ誰がオーナーであっても大切に扱われなければならないと思うようになった。フェラーリならボルト1本まで仕上げる時間がもらえるような仕事ができて、ユーザーにも喜んでもらえると思った。ただ単に日々使う日用品を応急手当のように治すのではなく、まるで美術品のように修復していく。できるだけ、エンツォの工場を出てきたときの姿と性能を保持する。そういう仕事なら自分の経験がもっと生きるだろう。
 
よし。フェラーリメインでやっていこう。ナカムラは決断した。
 
同時にフェラーリを販売する大阪の有名店に通って、テスタロッサを探し続けた。とにかく程度のいい個体が欲しかった。あるとき、それまでほとんど相手にしてくれなかった店員が帰りかけようとしたナカムラに声を掛ける。「新車ならありますよ」

正規輸入元の通関証明も付いた正真正銘の未登録新車、最終型91年式の赤いテスタロッサだった。もちろんナカムラは買った。無理をしたが結果的にその出会いがナカムラに様々な経験をもたらすことになった。
 
赤いテスタロッサは今もまだ彼のガレーヂにほとんど新車のコンディションのまま保管されている。(つづく)



株式会社ナカムラエンジニアリング
639-1103 奈良県大和郡山市美濃庄町271番地の13
TEL. 0743-54-6400
https://www.nakamuraengineering.com/

文:西川 淳 Words: Jun NISHIKAWA

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