北へ、南へ、シトロエン2CVと30年│第4回 シトロエン2CVとVWビートル徹底比較(その2)

戦後のドイツ車を代表する名車、VWビートル(Octane日本版編集部の元社用車)と、同じくフランス車を代表するシトロエン2CV(筆者の私物)の徹底比較企画、第二弾は走りくらべだ。第一弾はこちら

●ステージ1 日常走行インプレッション編

ともに設計は戦前の両車だが、テスト車両は2台とも日本正規輸入としては最終型である。ビートルは1976年型、2CVはぐっと新しく1990年型だ。走行性能は初期のものよりも格段に向上したモデルである。

最初に断っておくとテスト車両のビートルはスポルトマチックというクラッチペダルのないセミオートマ仕様である。トルコンと自動クラッチを組み合わせたこのシステムは、現代のAT車のようにDレンジに入れておくと自動変速してくれるものではなく、手動で前進3段のギアを切り替えていくタイプだ。ただしトルコンがついているのでクリープもするし一番高いギアでも緩慢ながら発進を許すイージーさを持つ。



このスポルトマチックのおかげもあって、ビートルの市街地走行は拍子抜けするほどスムーズで、余裕を持って流れに乗ることができる。もちろんバタバタうるさい1.6リッター空冷水平対向エンジンが十分なトルクを発揮していることが、その余裕の源泉である。一方でセンター付近がやや曖昧なステアリングと、ペダルストロークが深いうえに初期の効きが穏やかなブレーキには慣れが必要だ。



ビートルの乗り心地は普通だ。悪くもなく良くもない。愚直に衝撃を和らげるタイプのものだ。コーナリング時やブレーキング時の姿勢変化の少なさなども含めて、現代のゴルフとも通じるフォルクスワーゲンらしい安定感のある乗り味である。

一方の我が愛車2CVはオリジナルの602ccではなく650ccのオーバーサイズピストンを組み込んでいることを正直に告白する。オリジナルの29馬力に比べ1割ほどパワーアップしているものと思われるが、だとしても32馬力にすぎない。



2CVも4段マニュアルを駆使すれば、世間で言われるほど街中で不自由を感じることはない。ただビートルの半分以下の排気量しかない空冷水平対向2気筒エンジンは特に低回転域でトルクの薄さを隠しきれない。プルルーンと軽快なエンジン音とギャイーンとうるさいギアの音を織り交ぜながら、高回転まで引っ張って適切なギアを選択していくのが、この車の乗り方だ。

2CVに乗って驚くとしたら遊びが少ないステアリングとブレーキ、そして見た目の薄っぺらさを裏切る重厚な乗り心地であろう。この乗り味は現代のシトロエンのそれに通じるものがある。



一方でコーナリング時の深いロールは現代の基準から大きく逸脱している。上の写真の速度は20km/hちょっとしか出していない。左側に人が乗っているとはいえビートルと比べるとその差は歴然だ。ただし持ち主である筆者の弁明(?)を聞いていただけるのであれば、ロールのスピードは自然で、いきなりグラっと傾くわけでないし、路面を掴んでいる感じも伝わってくるから怖くはないよ、と言いたい。


文:馬弓良輔

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