12台だけの特別な2シーター│バカラルに見るベントレーの未来

Bentley motors



「ルーフを持たない2シーターを生み出すのは、デザイナーにとって夢のような仕事でもあります。なぜなら、通常の生産モデルではここまで実用性をそぎ落とすことができないからです。しかし、12台だけの生産となれば話は違います。むしろ、12台のうちの1台を購入されるお客様にとっては、より興味を惹かれる車になるからです。どちらかといえば、バカラルはコレクターズ・アイテムです。その目的は(前述の)ブロワーがそうだったように極めて明確で、ブロワーの場合はレースでしたが、バカラルの場合、これはステイトメントになります」
 
バカラルのベースはコンチネンタルGTコンバーチブル。ただし、ベースとなったコンチネンタルGTと異なり、バカラルのボディはイギリス・クルーに建つマリナーで生産される。



「完全にイギリス製です」 そう主張するのは、このバカラルのデザインも担当したインテリア・デザイン部門のトップ、ダレン・デイである。「目に見える部分はほとんどすべて専用に作られました。エクステリアでキャリーオーバーされたのはドアハンドルだけ、インテリアではエアバッグだけで、それ以外はすべて新設計です」
 
ちなみにバカラルのボンネットはアルミ製で、それ以外のボディパネルはすべてカーボンコンポジット製だという。


 
続けてデイがデザイン上の特徴を説明してくれた。「ルーフを持たないためにキャビン後方を極めて低くまとめることができました。ベントレー伝統のパワーラインとホーンチラインが受け継がれていますが、新しい解釈でデザインしました。テールライトのデザイン、浮き上がっているように見えるリアエンド上のベントレー・ロゴ、深い切れ込みが入ったリアエンドの処理などはいずれもコンセプトカーのEXP 100GTにインスピレーションを得たものです。ヘッドライトを左右ひとつずつとして、そのサイドにデイライト・ランニング・ライトを設けたのもEXP 100GTで考案されたデザインです。これはベントレーの将来的なデザインの可能性を示すものです」
 
つまり、これが次世代のベントレーの顔となるのか? そう聞くと、デイは「ベントレーのデザインがどう進化できるかを示しています」といって明言を避けたが、その可能性はかなり高いと見てよさそうだ。


インテリア・デザイン部門のトップ、ダレン・デイ。バカラルのインテリアにおいては、エアバッグ以外すべてが専用に作られたものだという。これから、彼が生み出すアイデアが楽しみだ。

「バカラルはおよそ9カ月で開発しましたが、今後は1台の開発に12カ月ほどを費やすつもりです。いずれにせよ、超富裕層の方々をあまり長くお待たせするわけにはいきませんからね」 そう語るジーラフに「次作のアイデアはあるのか?」と訊ねると、「ええ、次作だけでなく、すでにいくつかのアイデアを頭のなかで描いています」との答えが返ってきた。今後が楽しみだ。


文:大谷達也 

文:大谷達也 写真:ベントレーモーターズ Words:Tatsuya OTANI Photography:Bentley Motors

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