トヨタが2000GT用補給部品を復刻生産(続報)開発スタッフへインタビュー

GAZOO Racing Company

文:伊東和彦/Mobi-curators Labo.
写真:トヨタ自動車株式会社 GAZOO Racing Company

トヨタ自動車GAZOO Racing Companyが、「GRヘリテージパーツプロジェクト」として、2000GTの補給部品を復刻し、国内外に販売することは、この『Octane web』でも、7月6日に第一報を掲載した。同プロジェクトとしては、2019年5月に明らかにされたA70型とA80型スープラに続くもので、2000GTが企画第二弾となる。今回の続報では、この計画を進めているGRスタッフへのインタビューをおこない、その内容をさらに少し詳しくお伝えする。


7月上旬のある日、トヨタの名古屋拠点、24階会議室にズラリと並べられてインタビュアーを待っていた復刻部品の一部。


8月1日からオーダー受付開始
2000GTについては、2020年8月1日から、順次、TGR Webサイトにて情報の公開がはじまり、オーダー受付を開始。純正部品と同様にトヨタの販売店で購入できるようになる。ただし、クラシックカーであることから、車両オーナーのみ、車両あたり数量制限付きでの販売となる。

トヨタ2000GTは、1967年から1970年の生産終了までに、337台が生産されたに過ぎないが、9割ほどが現存しており、日本国内には200台が残っているのではないかと推測されている。中には休眠状態の車もあるだろうが、今回の部品復刻生産が呼び水となって、再び路上に戻ってくることが期待される。

まず、ギヤ関係から復刻
8月1日から順次、販売される復刻部品の品目は、5段マニュアルトランスミッション(以下、5MTと表記)用と、デファレンシャル(以下、デフ)・ギヤ関係部品で、ともに新規部品の入手が望まれていたものであった。今後の計画では、すでにブレーキ関連部品などが、次期有力候補に挙がっている。さらに、TGR Webサイトやオーナーズクラブなどからユーザーの希望を聞き、復刻する部品を決定し、供給できる範囲を増やしていく計画だという。2000GTは発売から2年後の1969年8月にマイナーチェンジして後期型に発展しているが、外観の変更箇所は少なかったものの、機構面については広範囲にわたって改良が施されていた。


トランスミッションのギヤとシンクロハブ・スリーブ。これは前期型用。2000GTは前期型の方が生産台数が多い。


後期型用のトランスミッションのギヤとシンクロハブ、スリーブ。変速比も変更されたほか、前期型と比較すると歯の幅も拡大されてる。



トランスミッションのスラストワッシャ(左)とシフトフォーク。



トランスミッションに用いられるベアリングキット(一部)、前期型(前列)と後期型(後列)。


5MTとデフに限ってみても、前期と後期型では、強度を増すためにギヤのサイズアップのほか、5MTでは変速比の変更などが施されているため、復刻すべき部品は多岐にわたるが、それら両方を用意して、ユーザーの声に応えている。デフに関しては、生産の手順が先に整った後期型から9月を目処に販売を開始し、その後、前期型が加わることになっている。

現行車用と同じ工場で生産

デフギヤ類の復刻製作に当たるのは、トヨタ自動車内で駆動系足回り部品の生産を担う明知工場(愛知県みよし市明知町)で、5MTのギヤは本社工場(愛知県豊田市トヨタ町)である。ともに現行車用部品を量産している工場であり、今回のような少量の受注生産には困難を伴うのではと記者は想像したが、現在では試作ラインを活用することによって対応が可能なのだという。


ファイナルギヤキット。これは後期型。終減速比は新車時に標準装着だった“4.375”。


工場には、当時の加工機技術を知る熟練技術者がまだ在職していることも、計画の実現
を後押しする強みになっているという。「検討段階から1年で完成に漕ぎつけたのは、人に恵まれていたからだ」と、この計画のリーダーである茂木英雄さん(GAZOO Racing Company事業・モータースポーツ推進室主幹)は語る。

文:伊東和彦/Mobi-curators Labo. 写真:トヨタ自動車株式会社 GAZOO Racing Company

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