「世にも数奇な物語」を紡いだランボルギーニ・カウンタックLP400S

Photography:Yoshito YANAGIDA



シリーズ1の証ともいうべきローボディにブラーボホイール、さらには所謂ウルフ三号車(LP400S 一号車・プロトタイプ・#1121002)と同タイプの電動式リアウィング(翼端版付きがユニーク。コクピットから角度調整ができる。ウォルターとアーミンもまた仲が良かったという)を装備した姿は、カウンタックファン憧れのスタイルであり、究極のひとつ。消火器を備えていたのは、その必要性を誰よりも知っていたのがアーミンとヴァレンティノだったからだろう。この個体が当時最重要カスタマーのひとりであったアーミン・ヨールのため念入りに生産されたことは、車体に付随するスペシャルプレートの存在からも明らかだ。
 
ヨール兄弟は79年にも2台のLP400Sを手に入れており、#1121026は入れ替えに売却されていた可能性が高い。そして1981年にはアメリカへと渡っている。その際、当時のアメリカ運輸省( DOT )アプリケーションに適合させるべく、前後バンパーが変更され前後サイドマーカーも追加された。ドライビングフォグランプはインパクトバー入りのフロントバンパーとしたため撤去されたのだと思われる。


 
その後、長らくアリゾナのミュージアムが保有し、整備はヴァレンティノの師匠というべき元チーフドライバーのボブ・ウォレスが受け持っていた。なるほど、語り継がれるべき物語のある個体はどこに渡っても"もてなし"を受けるものである。93年ごろに有名なスーパーカーショップによって日本へと持ち込まれた。以来、現オーナーが手に入れるまで長らくエンスージアストの手元にあった。
 
この原稿を書くにあたってアーミン・ヨール本人ともコンタクトを取ることに成功した。けれども彼の記憶もまた混乱していた。それはそうだろう、当時、彼ら兄弟はほとんどランボルギーニのスポンサーのようで、毎年のように最新モデルを買っていたのだから。そしてこれもまたよくある話なのだけれども、未だ現役のカーマニアである彼の目は過去を振り返ることなく未来を向いており、メッセージのやりとりはたいてい次の愛車(T50らしい)の話題に移ってしまうのだった。
 
#1121026について、その存在は知っていたけれども、詳しく調べたのは今回が初めてだった。たったひと晩でかき集めた情報ゆえ、間違いもあろうかと思う。さらなる事情をご存知の方がいらっしゃればご教授いただければ幸いである。

文:西川淳 写真:柳田由人 Words:Jun NISHIKAWA Photography:Yoshito YANAGIDA 取材協力:エーリストガレージ Thanks to:A-List Garage(TEL:03-3784-2211 )

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