北へ、南へ、シトロエン2CVと30年│第5回 シトロエン2CVとVWビートル徹底比較(その3)

戦後のドイツ車を代表する名車、VWビートル(Octane日本版編集部の元社用車・1976年型)と、同じくフランス車を代表するシトロエン2CV(筆者の私物・1990年型)の徹底比較企画、その第三弾は日常での使い勝手をインテリア中心に比べてみたい。現代の車とどこが違うのか、そしてどちらが今日の日常使いに適しているのか詳細にレポートしよう。



最初に結論を書いてしまうと、ビートルのキーをいきなり手渡されたとして恐れることはあまりない。もちろんリモコンキーではないから鍵穴にキーを差し込み回してロックを解除する。鍵穴や車内側のロックノブの位置は「あるべきところ」にあるから迷うことはないだろう。

うっかり忘れがちだが、集中ドアロックなんて便利なものもない。助手席に人を乗せる場合は、助手席側のロックを手動で解除しなければならない。自分が先に運転席に乗り込んで中から開けるか、ジェントルマンのように助手席側まで歩いて行って開けてあげるかは、乗せる人への愛情の度合い(?)で決めれば良い。



運転席に座ってドアを閉めるとバンッという頼もしい音がする。40年以上前の車とはいえ、いかにもドイツ車。「しっかり閉まっています」という音だ。最近はタクシーですらパワーウインドウが付いているが、ビートルはもちろん手動で開けなければならない。しかし開け方はみなさんに教えるまでもないだろう。



問題があるとしたら三角窓の開け方くらいだが、これも一度聞けば覚えられる。ただノブをつまんで左に回せば良いのだから。こういう細い部分のパーツのしっかり感もさすがドイツ車だ。後述する2CVの「半開器」なるものとは比較にならない。

それにしても安全上の理由などで開閉式の三角窓が廃止されて久しいが、改めて便利な機構だと思う。軽く開ければ室内の風を吸い出し、奥まで開けると室内に風を呼び込むことができる。写真のように軽く開けておく分には雨の吹き込みも気にならないので、スモーカーにはありがたいし、昨今取り沙汰されている「密」を防止するための換気装置としても実に有効だ。



ビートルのシートの前後調整は、シート下のレバーを上げながらスライドさせる。背もたれの角度調整は、シート右側側面のダイヤルを回す。リアシートに人を入れるときは、シート側面のレバーを上げる。これらはいずれも今日でも欧州車のスタンダードなやり方だ。

唯一違和感があるのは、シートベルトが自動巻き取り式ではないことである。これは非常に不便だ。他人と運転を代わったときはもちろん、例えばETCカードを抜き差ししようと前かがみになろうとしたときに拘束されるのは、実に「イラっ」とする。


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