平均時速210.28kmを叩き出したポルシェの長距離レースへの挑戦

Porsche AG



3日目。木曜日の夜の走行は再び激しい雨に見舞われ、問題が発生する。雨専用のタイヤを用意していなかったのだ。夜間走行はただでさえ見通しが悪いのに、それに加えて大雨が降りしきる。路面を照らすライトだけを頼りに、最低でも200km/hをキープしながら走り続けねばならない。ファイアストンのスタッフは自らの手でタイヤに雨を排水するための溝を削り、どうにか危機を凌いだ。シュテックケーニヒは、「ドライバーのチャールズ・フォーゲレが走行を終えてピットに戻ってきたときの表情は、本当に疲労困憊といった感じでした。

『バンクでのコーナリングはひたすら前に突き進んだ』と話してくれたのを、今でも良く覚えています。ドライバーたちは皆、心身ともに強靭でした」と振り返る。モンツァ・サーキットのレストランは、スピードトライアルが行われる日は24時間営業だった。「一度、夜8時に"朝食"を取りに行ったこともありましたね」と、リコ・シュタイネマンはいう。



4日目。金曜日の夜、チームの興奮は最高潮に達した。これまでの苦労が報われるのか否か。答えが出たのは、夜7時頃のことだった。911Rの総走行距離は1万5000kmとなり、平均速度210.22km/hの新記録を打ち立てた。さらに72時間(3日間)で平均209.94km/hの世界記録も達成していたのだ。しかし喜びもつかの間、コースが急に霧に包まれる。視界はたったの40mだ。それでも午前0時を回る頃、チームは1万マイル(約1万6000km)で平均210.28km/hの新記録を達成し、残り20時間に挑んでいった。

刻々と時間が過ぎる中、雨は強まり、ドライバーとチームスタッフの疲労はピークに達していた。そんな中、911Rは好調を持続する。そしてスタートから4日後の土曜日夜8時。ポンッと大きな音を立ててシャンパンのコルク栓が宙に放たれた。911Rが総走行距離2万kmを96時間、平均速度時速 209.23kmで走り続け、新記録を更新した瞬間だった。数日前までツッフェンハウゼンのテスト部門にあった1台のマシンが救世主として打ち立てた金字塔である。911Rがスピードトライアルで樹立した記録の数々は、どんなピンチでも諦めなかったチームの熱意と汗の結晶であった。

オクタン編集部

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事