アウディの四輪駆動の生みの親を訪ねて│本領を発揮するクワトロ

Photography:Stefan Warte

この記事は『「ザ・峠マシン」でアルプスを駆け抜ける!アウディがクワトロを投入してから40年』の続きです。

クワトロの加速は穏やかだが2000rpmを超えたあたりから、ターボチャージャーのブーストが効きはじめ、楽しくなってくる。2速へシフトアップし、3速に入れようとする際はややコツが要る。同様に3速から2速へシフトダウンする際は、4速に入ってしまったりギア鳴きさせてしまったりすることもある。なぜならシフトストロークが長いだけでなく、慣れるまではシフトゲートが不明瞭に感じるからだ。アクセルペダルを踏み込めば、気にならなくなるのだが、もっとヒール・トゥがしやすいペダルレイアウトだったらとも思う。エグゾーストノートは4000rpmくらいではビブラートの効いた美声、フルスロットルにすれば力強くも5気筒エンジン特有の唸り声となって轟く。

 
しばらく運転すればスロットルレスポンスにも慣れる。一部ではターボラグの存在が指摘されているのだ。ブーストが効きはじめるのが2000rpmくらいからなので、このエンジン回転数以上をキープすればストレスを感じることはない。エンジンは一気呵成に6000rpm以上喜んで回る。ただ、アウディが当時謳っていた、"6気筒のスムーズさと4気筒のコンパクトさ" は少しばかり過大広告の部類に入るかもしれない。4気筒よりも個性豊かで、5気筒エンジンの誕生秘話は後でローラント・グンペルトに振り返ってもらおうと思う。
 
コーナーを駆け抜ける際、たとえ雪道だろうと路面に食らいついた感じは安心感がある。決してつまらない走りではない。私のようにヒール・トゥを諦めると、コーナー侵入時は右足でしっかりブレーキペダルを踏み込み、ギアが入ってくれることを祈りながらすかさずシフトダウン。2000rpm以上を保てれば、エイペックスからの加速はこのうえない快感で笑みがこぼれる。
 
ハルトムート・ヴァルクスがベースデザインを手掛け、マーティン・スミスがブリスターフェンダーなどでクワトロを神聖な存在へと昇華させた。今は亡きフェルディナント・ピエヒをなくしては語れないのがクワトロであり、ポルシェにとっての「カレラ」に匹敵する、アウディにとってアイコニックな存在となった。個性豊かなハンドリング、エキゾチックなエグゾースト音、ぎこちないギアシフト、ちょっとダサいインテリア、すべてがクワトロの愛すべきポイントである。クワトロは1980年代の象徴となり、911と同列に憧れの的だった。


 
オーストリアのアルパインから離れ、インゴルシュタットへと場所を移そう。とはいってもアウディの本拠地ではなく、ローラント・グンペルトのオフィスへだ。彼こそがアウディの四輪駆動の生みの親で、アウディのエンジニア時代にVWイルティスの開発責任者を務めた人物だ。VWブランドとして納品されたのは、アウディにドイツ軍との"口座"が存在しなかったからだといわれている。これについては後述する。

編集翻訳:古賀貴司(自動車王国) Transcreation:Takashi KOGA (carkingdom) Words:Glen Waddington Photography:Stefan Warte

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