「ロード最高峰のスポーツカーを開発するためにモータースポーツを闘う」

「ロード最高峰のスポーツカーを開発するためにモータースポーツを闘う」。これはポルシェ創設者であるフェリー・ポルシェのレースに対する基本姿勢であった。

そして常にその言葉通りの恩恵を受けてきたのが 911ターボである。この歴史に残る1台が誕生したのは、ポルシェ 917/30 スパイダーが存在したことに他ならない。カンナムシリーズで連勝を続け、本国アメリカでは “ ドイツの戦車 ” とすらいわれたマシンだ。917/30は、1975年、マーク・ダナヒューのドライビングによりアラバマ州タラデガで全長 4280kmのレースを平均速度355.86km/hという驚異的なスピードで走り抜け、オーバルサーキットにおける世界新記録を打ち立てた。

ターボエンジンの効率性という面において、エンジン開発の専門家であるハンス・メツガーが気に入っていたものが、1980年代にポルシェが TAG ターボとしてマクラーレン向けに開発した F1 エンジンである。最高出力 800psを誇る 1.5 リッター V型 6気筒ターボエンジンを搭載するこのマシンは、レギュレーションにより燃料消費量が制限されていたにもかかわらず無類の強さを発揮した。

1984年4月、南アフリカのキャラミサーキットではニキ・ラウダとアラン・プロストが操るマクラーレンの TAG ターボが、1-2体制のまま全75周 307.8kmを走りきるセンセーションを巻き起こしたが、他のマシンは周回遅れ、あるいは燃料切れとなりリタイヤを余儀なくされるという状況に陥ったため、これが物議の発端となった。ライバルチームが「こんな結果はあり得ない。インチキだ」と、抗議を立てるまで発展した。マクラーレンのマシンは燃料タンクを外して調査を受けたが、もちろんレギュレーションにきちんと合致していたのはいうまでもない。こうして、マクラーレンはポルシェが開発したターボエンジンで3度の世界チャンピオンに輝いたのであった。

オクタン編集部

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