びっくりするような事実が次々と明らかに・・・特別なポルシェ930ターボ

Photography:Jonathan Fleetwood

この記事は『ポルシェ 930ターボの強さ│姿を消していた一台のヒストリーを辿って』の続きです。第一弾はこちら

その後930ターボはダンカン・ハミルトンROFGOにより昨年スイスからイギリスに輸入され、再び人の手に渡った。この会社のサイモン・ドラブルが語るには、そのとき彼らが手に入れた車の中で車歴のわからないものは何台かあったが、このポルシェもその1台だったという。


「調べてみるとびっくりするような事実が次々と明らかになってきたんです。スタッフによると、レース用に特別に仕立てられたポルシェだというので私もわくわくしましたよ。誰かが恣意的に装ったのではないかとの疑念もありましたが、そういうことはなかったようです。また、作為的に車歴を隠そうとした人がいたわけでもなく、人知れず自然と世の中に出てきたのです。今こそ援助の手を差し延べスポットライトを当てる時だと思いました」とサイモンは語ってくれた。


 
この車のヒルクライムにおける戦績などさほど重要でないと感じる人は当然いるだろうが、ル・マンとなれば話は別だ。スイスの法律によりスポンサーのロゴやレースナンバーが取り払われたおかげでこの車の無名性は守られてきたのだが、言い換えればこの930ターボがル・マンで走ったことを証明するものは何もないということでもある。今日それを証明できるのはダッシュボード上のプラークのみだが、それさえもあとで作られたものといえなくもない。
 
車にロールケージは付いていたものの控えめで、これ見よがしのレース用パーツもほとんど見られなかった。目につくのはむしろマクラフラン製のタータンチェック柄のドア内張で、速度計も標準的な300km/h目盛りのものだったし、驚くことに、モーターの重さゆえにレース仕様を作ろうとしたら真っ先に外したくなるパワーウィンドーやリアシートもそのまま残っていた。純粋なアマチュアの人がたまに飛ばすくらいのスポーツ仕様、そうとしか思えないのだ。
 
『Octane』の仕事で私が取材した時、車は社主であるエイドリアン・ハミルトンが仲間やお客さんを引き連れて大陸までひと回りする試乗ツアーから戻ったばかりで、シートの上は散らかり放題であった。リアシートに積まれているものを見ると道路地図だったりティッシュボックスだったり、現オーナーの生活感が満ち溢れていた。そのオーナー、ヴィスカウント・コウドレイがいうには、日常使用できること自体がアピールポイントなのだという。彼はここのスタッフと出会うまでは車についてまったくの素人だった。

編集翻訳:尾澤英彦 Transcreation:Hidehiko OZAWA Words:James Elliott  Photography:Jonathan Fleetwood

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