いかにも速そうな「青い小型爆弾」│信じられないほど情熱的なサウンドのブガッティ

Photography:Max Earey


 
オリジナルの標準仕様は40bhpだったが、それでもブガッティ・タイプ13は1921年のブレシア・ヴォワチュレット・グランプリで3台がトップ4に入り、そこから"ブレシア"と呼ばれるようになった。サイモンの車はそれ以前の製造だ。タイプ13とその改良型のタイプ22、23は1926年まで製造が続き、その数は2000台を超えた。クローバーリーフのわずか57台とは対照的である。
 
ホイールベースはたった2メートルで、テールに横たわる樽形の燃料タンクを見ると、青い小型爆弾とでも呼びたくなる。スタイリングはそれほど考慮されず、メカニカルパーツに簡略なボディをまとっているだけだ。むき出しのパーツはクモの脚のように心許なく見えるし、細いビーデッドエッジタイヤも、これから走るスリッピーな路面では安定感に欠けるだろう。私はリアの1/4楕円リーフスプリングに興味を引かれた。通常はリアアクスルの前に装着するが、この車では後ろ側に固定されている。こうするとブレーキング時にテールが浮き上がりやすくなるので必ずしも歓迎はできないが、トラクションは向上するといわれている。
 
左側から乗り込み、指示されたとおり、ギアボックスの上に左のかかとを乗せた。まずはサイドパネルの外にある大きなプランジャーポンプを操作してタンク内の圧力を上げて燃料を圧送するが、エンジンが始動すると(最近取り付けたセルフスターターのおかげで簡単だった)、あとはエンジン駆動の小型エアコンプレッサーが引き継ぐ。一体鋳造のエンジンは、これほど古いものにしては信じられないほど情熱的なサウンドだ。いよいよ丘の麓を出発する。


 
もちろんノンシンクロメッシュだが、フライホイール効果がごくわずかなので、タイミングが適切なら驚くほど簡単に電光石火のシフトアップができる。サイモンがこのブガッティでレースをするときは常にそうだという。シフトダウンも同じくらい速いが、外部にあるギアレバーを操作しながら、ダブルクラッチで素早く3度ペダルを踏む。少々やっかいなのは、1速と3速に入れる際、レバーを前方に押すのではなく手前に引くのを忘れないようにすることだ。
 
加えて、私はリアタイヤがブレーキングで滑らないかと心配で、最初のうちは極度に慎重だった。しかし、もっとハードに攻めろとサイモンがけしかける。平坦な区間で試してみると、パワーが嬉々として湧き出し、エンジンが爆発的に回転を上げた。それでも4000rpmを超えるのは賢明ではないだろう。さあ、次はコーナリングだ。すると、小さなブガッティのステアリングが驚くほど正確なのが分かった。ブレーキもかなり頼りになるし、相当のトルクが湧き出すので上り坂も軽快に駆け上がる。頂上で4速に上げたほどで、吹きつける風で借りたサングラスが飛ばされかけた。これは、アストンマーティンにとってはかなりの強敵である。


エレガントなアストンマーティン・クローバーリーフに試乗・・・次回へ続く

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo. )  Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.)  原文翻訳:木下 恵 Translation:Megumi KINOSHITA Words:John Simister 

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