滑らかさに磨きを掛けたグランツーリスモ│大幅に刷新された新型ベントレーベンテイガを試す

Photography : Kunihisa KOBAYASHI.




英国クルー工場でラグジュアリーな素材と高度なクラフトマンシップによって作られたインテリアは、相変わらず見ても触ってもため息が出るほど仕立てが素晴らしい。ベントレーのウイングエンブレムを象ったT字型のインパネや、独特な空調のルーバー切り替えボタンなど伝統的なデザインは継承するものの、一方で10.9インチのワイドモニターが象徴するように至るところでデジタル化が進んでいる。タイプAだったUSBポートが全てタイプCとなり、エアイオナイザーと呼ぶ空気清浄機が採用されるなど、使い勝手の面でも細やかなアップデートが施されている。デジタルついでに触れるならいわゆる先進安全装備も250km/hまで対応するACCなど最新タイプが用意された。



試乗車のインテリアは「ダークティントダイアモンドブラッシュアルミニウム」という新設定のオプショントリム仕様だったので、外観同様スポーティな印象が強かった。もちろんボディカラー同様、インテリアも標準で5色のレザー、オプションの「カラースペシフィケーション」なら10色がチョイスできる。



さらに数多く選択肢が用意されたステッチやパイピング、カーペットやウッドパネルなども組み合わせて、自分好みの世界観に仕立てることができる。望めばマリナーによるスペシャルなインテリアもある。いつものベントレーの流儀だ。

最上のグランツーリスモ

走り出した瞬間から最高速度領域まで、ベンテイガが提供するのは圧倒的な滑らかさと安定感だ。それは前モデルからそうだったし、もちろん新型も同じだ。クローズドのテストコースなので安心してアクセルペダルを踏み込めば、550psと770Nmを発揮するV8ツインターボは快音とともに、あっという間に200km/hオーバーの世界へと連れていってくれる。この速度域だとさすがに風の音というか圧力の高まりを感じるが、耳障りな風切り音は全く発生しない。



高性能なV8エンジンと8段ATは踏めば踏むほど底知れないパワーを供給する。しかし、前後40:60のトルセンセンターデフを持つフルタイム4WDシステムとアダプティブエアサスペンション、そして22インチの大きなタイヤで構成された足回りはパワーソースより常に優位に立っている。加速時や巡航時はもちろん、レーンチェンジや強めのブレーキへの対応も文句ない。タイトコーナーでの身のこなしの軽さは相変わらず特筆すべきレベルだし、22インチを感じさせない低速域での乗り心地もお見事だ。

全長5mオーバー、重量2.4トン強の巨体のSUVながら、ベンテイガもまたベントレーらしくドライバーズカーである。他社のハイパフォーマンスモデルとは違って、車の動きに常に「タメ」を感じるのもまたベントレーらしい。スポーツカーではなくGT、グランツーリスモなのだ。



今回の新型は2016年の日本導入当初に乗ったW12モデルに比べると、足回りの滑らかさと静粛性の点で磨きがかかっている。当日乗った2019年のV8モデルと比べると無駄な動きが少し減った印象を受けた。まあ、あえて言えばの話ではある。

新型ベンテイガの日本でのデリバリー開始は2020年の年末ごろを予定している。またプラグインハイブリッドモデルや6リッター W12を搭載したスピードモデルの登場も予告されている。




ベントレー ベンテイガ V8(本国発表値)
ボディサイズ:5125mm×1998mm×1728mm ホイールベース:2995mm
車両重量:2416kg エンジン形式:V 型 8気筒 ツインターボ
排気量:3996 cc 駆動方式:アクティブオールホイールドライブ 変速機:8段 DCT
最高出力:550ps / 6000rpm 最大トルク:770Nm /1960-4500rpm
最高速度:290km/h 本体価格:2142万 8000円(税込)


文:馬弓良輔 Words:Yoshisuke MAYUMI 写真:小林邦寿 Photo : Kunihisa KOBAYASHI.

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