ワークスカーだった一台をフルレストア│歴史的価値のある車に現代流の改造を加える


 
時の流れは確実に傷みを加える。そして1988年、次のオーナーがフルレストアを決意した。このレストレーションでは、ドナーとなったボディシェルから広範な移植を必要とした。ただし、ラリー用に改造した強化サスペンションのピックアップやスキッドプレートなどはアクセサリーパーツやメカニカルパーツなどと共に当時のまま残されていた。その後2008年には次のオーナーの元でヒストリックラリー出場のためリ・コンディショニングがおこなわれ、電磁燃料ポンプ、ラジエターファン、オルタネーター、バッテリー・マスタースイッチなどがアップグレードされている。しかし作業は途中で止まった。こうした歴史的価値のある車に現代流の改造を加えることが果たして良いのか…という問題である。



ロールケージがあるわけでも、パフォーマンスカムシャフトがあるわけでもない。もっとも車のオーセンティックさを傷つけるものは何もない。その姿は1966年のモンテカルロ・ラリー出場車そのもののアピアランスを保っている。それにドライブしても紛れもなく当時のものだ。つまり“普通の”初代ローバー2000である。エンジンに火を入れる。相変わらずSU HS6キャブレターを装備する。そのエンジンサウンドも休日の街中よりも頻繁なギアシフトの要求されるチュリニ峠の方が似合っている。
 
率直にいって加速はこんなもんだろう。所詮は90bhpである。それでもハルダのトリップメーターやエクストラ・スクリーンウォッシュ、スキッドプレート、それに夥しいライト類など、どれもこれもすべて当時のまま残されている。JXCはこの車がアッセンブリーラインを離れた時よりも間違いなく多くのコンペティショントリムを装備しているのだ。オリジナルのステアリングホイールはそのままだ。巨大な径のセンターには2000の文字が光る。リムにはDIYのレザーが巻かれている。そして1960年代の"バーグラフメーター"は思わず口元が綻む。スノーセクションに行けば間違いなくその快適さを認識するヒーター。外に出てもすぐに温まる。



まったく迫力に欠ける走りではあるが、JXCはとても楽しい。当時のドライバーたちはP6のハンドリングを賞賛した。決して強いラテラルグリップを持っているわけではないが、そのクォリティーは特にその予知のしやすさと寛容さについて、紛れもないラリーウェポンとしての資質を備えている。シャシーは極限状態においてもドライバーに緊張を強いることはない。たとえ極端なスリップアングルがついても、スピンアウトすることなく修正が可能だ。ステアリングとブレーキングはほぼ現代のスポーツカーレベルとしても過言ではない。というわけで初めて乗っても、まるで長年ドライブした車のように自信を持って動かすことができるだろう。


なぜ1966年、クラッシュさせたのか?次回へ続く

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