Symbolic International パトリック・ヴァン・スクート氏に聞く
カリフォルニア州の南部の都市サンディエゴに、クラシックカー専門ディーラー、Symbolic Internationalがある。同社CEOのパトリック・ヴァン・スクートは、日本のクラシックカーの世界ではよく知られた存在だ。しばしばビジネスやヒストリックカーイベントへ参加するために来日しているが、今回、氏のクラシックカーへの想いや昨今の世界におけるクラシックカーの状況などについて話を伺った。
1990年から2001年まで日本に住んでいました。日本にやって来たのは独特の伝統文化を勉強するためですが、私が日本に住みはじめて間もなくバブル景気が崩壊しました。その頃の日本にはクオリティの高いクラシックカーがたくさんありました。自動車マーケットに関心の高かった私にオーナーやディーラーの方々から、所有しているクラシックカーを海外に売りたいのだがどうしたらいいかと、そんな相談をいただくようになりました。個人が日本から海外に車を売りに出したり、買ってきたりというのはなかなか難しいことなので、つまり私がコンサルタントの役割を果たすことになったわけです。
真面目に仕事に取り組むと、日本有数のコレクターからも信頼をいただけるようになりました。同時に海外からも、日本にある車について問い合わせが来るようになったのです。そうした方々からの依頼で、アメリカで車を売却する仕事を手掛けるようになりました。やがて海外のコレクターやディーラーとも親しくなり、ネットワークが広がっていったのです。
日本を拠点にして頻繁にアメリカに行くようになると、1999年にカリフォルニアのSymbolic Motorsからビジネスパートナーにならないかと誘われました。話を聞いたうえで、その会社を100 引き受け、アメリカに移り住むことになったのです。
そのころのSymbolic Motorsは、クラシックカーだけでなく、ベントレーやランボルギーニのディーラーも営んでいました。ただ2008年のリーマンショックを機にマーケットが一変。事業スタイルを変えてクラシックカーに集中することにしました。会社名もSymbolic Motors Internationalにあらため、現在はクラシックカーの販売整備に集中しています。
日本にあった複数の250GTOほか、多くのクラシック・フェラーリを海外のコレクターに紹介しました。メルセデス300SLはガルウィングもロードスターも、数え切れないほどトレードをサポートしましたね。また73カレラRSも多かったと記憶しています。私は1963年生まれですので、個人的には1960年代の車に興味があります。フェラーリ、それもレーシングモデルは特にいいですね。日本にいた当時は911で耐久レースに参戦していたほど、レースカーを走らせることは大好きです。
最近の傾向としては、アメリカの若いお客様から、たとえばフェラーリ エンツォなどの問い合わせがあります。ポルシェ911は相変わらず人気がありますが、特に限定モデルをほしいという希望が多くなっています。1990 年代のスペシャルモデルや964RS、964ターボの限定版などの値段が高くなっています。
アメリカでは生産から25 年を経た自動車の輸入登録が法規上容易で流通も活発になってきました。ちょうど日本のバブル景気前後に当たりますが、この時期にはおもしろい車やスーパーカーがたくさん登場していました。この時代の車は「ニュー・クラシック」として、いま人気が高いですね。またアメリカでは正規輸入されていなかったモデル、たとえばメルセデスA M G のワイドボディS E L や、190 E 2.5-16Evo2も人気が高騰しています。
数年前にコスモスポーツや箱スカなどもオークションで高値が付きましたが、アメリカにおける日本の旧車ブームはピークを過ぎ、価格もだいぶ下がりました。トヨタ2000GTは綺麗なスタイルが魅力ですが、アメリカ人にとってはサイズが小さ過ぎますね。やはり右ハンドルが弱点になります。
最近は大手オークションの影響からか、多くの皆さんがオークションの落札価格を自分の車の価値だと考えてしまいがちです。それが完全な間違いとは言えませんが、海外オークションで車を売ることは、いろいろと手間がかかって面倒です。たとえば日本の方が海外のオークションに出品するとします。そのためにはまずオークション開催地まで車を送らなければならないのですが、それには費用がかかります。もちろんオークション会社に依頼して送り出すこともできますが、そうした手配の経費や運賃はすべて売り手側の負担です。また落札されたらオークション会社に一定のコミッションを支払う必要がありますし、落札されなかった場合、およそ3日以内には会場から運びださなければなりません。日本まで戻すという作業にはまた運賃がかかりますし、現地の保管料もかかることもあります。そうしたデメリットについて、あまり語られることはないようです。
私がビジネスでもっとも大切にすることは信用です。情報だけのブローカーのような仕事は一切しません。すべて自社で買い取りをさせていただき、代金を支払ってからアメリカに持ち帰ります。日本で仕入れた車で、それが日本国内での需要が期待できたとしても、そのまま国内に車を置いておくことはしません。必ずサンディエゴの工場で徹底的に整備を施し、商品として仕上げ、世界中で通用するレベルのヒストリー書類一式を作成します。私はそれが信用に繋がると信じています。
ヨーロッパやアジアからは遠いので、実車を見に来ることができないお客様はもちろんいらっしゃいます。そのために私たちのホームページには、詳細な情報をたくさんアップしてします。さらに、インデペンデント・インスペクター(独立した調査員)による報告内容を参考にしていただくことができます。
日本からの問い合わせを希望される場合には、私宛に連絡を戴ければ日本語で対応させていただきます。在庫車両の情報提供はもちろん、買取査定希望については出張で対応させていただくこともできますし、写真や書類などでのご相談も可能です。いずれにしても安全に確実に、歴史的なクラシックカーを新しいオーナーに引き継ぐことを、今後も続けていきたいと思います。
Symbolic International
11425 SORRENTO VALLEY ROAD, SAN DIEGO, CALIFORNIA 92121 USA
TEL:+1-858-259-0100 URL:www.symbolicinternational.com
日本語でのお問合せは E-Mail: patrick@symbolicinternational.com or TEL:+1-858-722-2200
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