北へ、南へ、シトロエン2CVと30年│第9回 結構な故障

Photography: Yoshisuke MAYUMI

悪い癖だとわかってはいるものの、故障ネタは盛り上がるからついつい話してしまう。今回は昨年春に起きた「どけよ!セレナ事件」について皆さんに報告することとしよう。

予兆はまったく無かった。翌日の取材に備えて前橋に向け2CVを走らせていた。関越道に入って90km/hで巡航しはじめてすぐ、少し遅い車がいた。だから抜かそうと思ってアクセルを踏み込んだときのことだった。 

「プン」という音がして耳が少し遠くなった気がした。そしてすごい向かい風を受けた。アクセルを踏み足しても向かい風は止むどころか強まる一方だ。スピードが緩やかに落ち続ける。ようやく向かい風じゃなくてエンジンがおかしいのではないかと思い始めた。

実は心当たりがあった。今回のドライブの前にちょっとした手違いがあって、いま2CVはハイオク半分、レギュラーガソリン半分という状態なのだ。欧州の場合、レギュラーガソリンのオクタン価は日本の89より高い91とか95だ。だから日本で乗る場合、多くの欧州車は100オクタンのハイオクが指定され、2CVも例外ではない。

しかも我が家の2CVのエンジンには内田さんというキャブレターの神様の手による、ライトだけど素晴らしいチューンが施されている。神様はレース屋さんなので、点火時期はけっこう「攻めた」セッティングだ。ハイオクでも3速や4速でアクセルを奥まで踏み込むと「シャリシャリ」と軽いノッキングが出ることが時々あった。オクタン価の低いガソリン、そして4速90km/hからの加速。ノッキング音は聞こえなかったけど、いつもよりアクセルを踏み込んだ自覚が確かにあった。 

ついにやってしまったか! 

エンジンブローという言葉が脳裏をよぎる。長いカーライフの中で屋根が飛んだこともあった(2CVだ)。エンジンルームから火が出たこともあった(2CVではない)。崖に乗り上げ三回転したこともある(もちろん2CVではない)。でもエンジンブローは初めてだ。

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