冷静でモダン、情熱的で古典│真夏のクローズドコースでW12とV8のベントレーコンチネンタルGTを試す

第三世代へと進化したベントレーコンチネンタルGTに追加されたV8モデルをクローズドコースで試す機会に恵まれたオクタン日本版編集部。非日常の世界で体験したコンチネンタルGTの魅力をお伝えしよう。

なんという幸運、2台のコンチネンタルGTとテストコースを独占!
様々な偶然が重なって、今、ここ茨城県の日本自動車研究所(JARI)城里テストセンターの外周路を走っているのは我々、つまり編集長のホーリーが乗るコンチネンタルGTコンバーチブルと筆者のコンチネンタルGT V8だけだ。クローズドコースを独占してベントレーの最新モデルを走らせることができるなんて、なんという幸運だろう!

2005年につくばから移転した城里テストセンターには総合試験路やバンク付きの高速周回路、悪路、低μ路など、様々な自動車用のテストコースがある。我々が走っている外周路は高速周回路の外側にレイアウトされた1周5666mのオーバル状のコースだ。一般路をイメージしているので多少のアップダウンがあり、コーナーも高速周回路のような極端なバンク角はつけられていない。タイトなコーナーのあるルートを選ぶこともできる。つまりサーキットよりも実際の路上に近いテスト走行が可能なのである。



普段は自動車メーカー各社が「真面目」な目的で使用しているこのテストコースを押さえることはなかなか難しいが、今はお盆休み、自動車会社の人々の姿は見当たらない。誰もいない灼熱のアスファルトの上をベントレーでぶっ飛ばそう!


冷静なW12、情熱的なV8
今回テストしたのはデリバリーが始まったばかりのV8エンジンを搭載したコンチネンタルGT V8とW12エンジンを積んだコンチネンタルGT。前者はクーペボディ、後者はコンバーチブルボディである。

4.0リッター V8ツインターボエンジンは最高出力550ps、最大トルク770Nmを発揮し、最高速度318km/h、0-100km/h加速4.0秒という数字を叩き出す。そして6.0リッター W12エンジンは最高出力635PS、最大トルク900Nmで、最高速度333km/h、0-100 km/h加速3.7秒と絶対的な性能では一枚上手だ。



とはいえ実際にはどちらも十二分に速い。途方もなく速い。絶対的な加速力はトルクで勝るW12の方がほんの少しだけ良いと感じたが、気のせいかもしれない。法定速度の世界での性能差は無いに等しいだろう。この2台の明確な違いは、常にパワフルでトルクフルなW12エンジン、シャープな回転フィールで踏み込むほどにターボの過給パワーを感じるV8エンジン、そのフィーリングの差だけだ。しかし、それが大きい。

W12エンジンはこれまでのコンチネンタルGTの世界観に忠実だ。このエンジンの全知全能ぶりは極めてモダンであり、いまだに異質でもある。そして薄まったとはいえ独特のビートを伴いながら、瞬時に底知れないパワーを供給するこのW12エンジンは常に冷静だ。モダン、異質、そして冷静。まさに現代のベントレーを象徴するにふさわしい。



一方のV8エンジンは回せば回すほど、誤解を恐れずに表現するならば「古典的」な世界観に触れることができる。V8らしい脈動とサウンド、そして鋭い吹け上がり。特に中間加速での伸びのあるエンジンの上昇感は、我々が慣れ親しんで来た情熱的なスポーティエンジンそのものだ。古典、親しみ、そして情熱。やはり車の性格を決定づけるのはエンジンなのだ。コンチネンタルGT V8はエントリーグレードという位置づけではなく、異なるキャラクターを与えられたモデルと解釈するのが正しい。ちなみにW12モデルとの価格差は200万円弱と、車両本体価格(V8:2498万1000円、W12:2680万7000円*いずれもクーペモデル)を考えれば、その差はむしろ小さいと感じる。そもそも多くのオーナーが外装や内装をビスポークするベントレーにおいて、「車両本体価格」に意味があるのかどうかも疑わしい。


文:馬弓良輔 Words:Yoshisuke MAYUMI 写真:小林邦寿 Photo : Kunihisa KOBAYASHI.

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