「見た目に難はあるけれど・・・」型破りなアプローチで軽さを追求したフェラーリ

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見た目に難はあるが、優れた性能を誇るフェラーリ・スペシャルはいくつも存在する。これもその1台。ヴィニャーレ・ボディの166MMを元に、ジュリオ・ムジテッリの依頼でアバルトが製造したワンオフだ。

重量は、加速、ブレーキ、コーナリングに影響を与えるため、完璧なレースパフォーマンスを求めるには間違いなく最も重要な要素である。モータースポーツの黎明期から、エンジニアは軽量化とシャシーの剛性を両立させることを目指してきた。そして、イタリアのコーチビルダーは特別に設計された軽量ボディを提供する。これらの中で最も有名なものは、鉄骨フレームに取り付けられたアルミニウムパネルで構成された、カロッツェリア・トゥーリングによる「スーパーレッジェーラ」であろう。

第二次世界大戦後、イタリアでは小排気量のレーシングクラスに人気が集まっていた。当時、特に強みをもっていたシャシーは、新しく設計されたフェラーリ166MMのものだった。 2リッター V12エンジンを搭載し、アルファロメオ、ランチア、フィアットから参戦。トゥーリングもヴィニャーレも、フェラーリの2リッター レーサーにフィットするように設計したボディを提供した。1953年、スクーデリア グアスタッラのドライバーであるジュリオ・ムジテッリは、ヴィニャーレボディの166MM(s/n 0262M)を受け取った。彼はこの166MMの車重に満足せず、カルロ・アバルトに新しいボディのデザインを依頼したのである。



オーストリア生まれのカルロ・アバルトは、エグゾーストシステムと型破りなアプローチで最もよく知られていた。アバルトの車はフィアット1.1リッター エンジンを搭載していたため、競争力のあるパフォーマンスを得るには軽量化が不可欠であったのだ。そんな彼にムジテッリは車の製作を依頼することで、満足できる一台が誕生することを期待していた。

166MMを軽量化するための、アバルトのアプローチは従来のものとはかけ離れていた。車重を大幅に削っただけでなく、レースに最適なボディを作り上げた。取り外し可能なアルミニウム製のパネルをサポートフレームにボルトで固定してシャシーを構成した。これにより、損傷したパネルをすばやく交換することができたのだ。大きなヘッドライトは中央に備え、その見た目は当時でも極めてユニークなものとなった。



ヴィニャーレボディの166MMよりも重量が約275kgも軽量になったアバルトスパイダーは、大成功を収めた。1953年のタルガ・フローリオのデビューではクラス優勝を獲得している。シーズンを通して活躍し、シーズンの終わりには、250MMと同様の3リッター V12に置き換えられた。

その後、何らかの理由でアバルトのボディは取り外され、スカリエッティのボディになった。1954年から姿を消していたが、ほぼ50年後にスカリエッティのボディを備えた状態で発見され、アバルトのボディを持ったオリジナルコンディションにレストアされている。 

オクタン日本版編集部

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