移り変わった歴史 フランスの独特な製本、装飾本文化「ルリユール」

中世の時代、書籍というのは手で書かれ、写本という手法で広がっていった。当時、本は誰かが読み聞かせるもの。それが15世紀に近づくとお金持ちの個人がそれぞれ持つというのが流行し、挿絵や装飾の凝った本が作られるようになる。この頃も手書きで1品ものだ。そして15世紀に入るとグーテンベルクの印刷機の発明により写本は終焉を迎え大量生産へと移り変わっていった。それが現在はデジタルに移り変わり始めている。
 
フランスにはルリユールという製本、装飾本の独特な文化がある。これは20世紀の初めくらいまで多くなったもので、当時本は冊子のようにして販売されており、その冊子を購入した人がいくつかをまとめて製本を依頼していた。その多くが革張りで、その家の紋章や装飾が遇えられていく。西洋の館の図書室でよく見かける革張りの本というのはこういう文化があるため統一されたカバーで並べられているのだ。数は減ったが今でもそれは残っている。
 
そういった装飾本や写本のようなものはそれ自体がひとつの美術品、芸術品となる。そういった美術品としての書籍、あるいは一品ものの写本などレアな本を展示販売されるイベント、サロン・アンターナショナル・ドゥ・リーヴル・レアが開催された。国際希少本展とでも訳そうか。場所は先日のツアー・オートのスタート地点になったり、2月のヴィンテージカーのオークションが行われるシャンゼリゼ通りとナポレオンのお墓のあるアンバリッドからの通りの交わるところにあるグランパレだ。

馬専門の本を扱うブティック。騎士や馬具までが書かれている本に、馬具を使ってディスプレイしている。

活版印刷を展示する国立印刷局。

 
コロナ禍でフランス以外の外国からの出展が極端に少なく会場も半分空いてしまっている。日本からも毎年5件以上は集まったのに今回は1件のみ。それでもスイスやスペイン、オーストリア、ベルギーなどから集まった。子供向け、いわゆる絵本専門だったり、地図専門、馬の本専門や料理の本専門などがあってとにかく楽しい。15世紀の美しい挿し絵の入った写本は勿論手書きで一品もの。価格は3000万円を超えている。

1486年に印刷されたもので15部のみ作られたフランス語版のひとつ。現在確認できているうち5冊は不完全な状態で、個人所有が3冊のみという希少価値がある。価格は3000万円を超える。
 
19世紀の後半になるとデザインという概念が一般的になる。そこで、香水メーカーのボトルのデザインをデザイナーの手書きのものを一冊の本にしたこれまた一品物の本や、ワインの専門店でチェーン展開するニコラ。ニコラは200年近い歴史のある老舗で20世紀初頭から企業キャラクターを使っている。1930年代にポスター画家のカサンドラが描いたことで一躍有名となった。

ワイン専門の全国チェーン店ニコラのキャラクターやロゴなどの1930年前後の資料。


そのニコラのポスターや広告の原案などを集めたものなども見かける。会場で目が慣れてくると細かいものに目がとまるようになる。オクタン読者が興味のありそうな車に関するものはないか?目にとまったのは第19回モンテ・カルロラリーのポスターだ。1949年のものでホチキスが描かれている。これは印刷されているが、もうひとつはシトロエン C6FやC4Fの広告用のイラスト。これは原画だ。そんな掘り出し物も見つかる。

1949年のモンテカルロラリーの広告。

シトロエンの広告のための原画。

 
古い作品だけでなく現代のルリユールの作家による装飾本などもあり、雑誌、メディアに関わる一人として本についてのあり方をちょっと考えるいい機会となった。

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