量産バイク最大排気量2458ccってどうよ? トライアンフ ROCKET 3 Rに試乗

オクタン読者ならば、英国トライアンフのバイクといえば、スティーヴ・マックイーン主演の映画『大脱走』を思い起こす方が多いかもしれない。そこで登場したのは排気量650ccの1962年型「TR6R」だった。映画の中では準主役級の取り扱いで、牧草地などオフロードでも活躍する軽快な走りに魅了されたものだ。現在のトライアンフはレーサーモデルやツーリングモデルなどバリエーション豊富なブランドとなっているが、中でも量販モデルで最大の排気量を誇るロケットシリーズは絶対的な存在感を示している。

初代ロケットⅢが登場したのは2004年。2294cc直列3気筒エンジンを搭載し、世界最大排気量のクルーザーとしてデビューを果たした。アメリカンV8エンジンを搭載したボスホスのような異色バイクもあるが、量産車としては間違いなくトライアンフのロケットⅢが排気量としては最大級であった。



そしてツーリングモデルの追加やマイナーチェンジを重ね、新型ロROCKET 3 Rへと引き継がれたのだ。このバイクに興味をもったのは、実は自身が初期型ロケットⅢを所有していたからだ。ビッグバイクながら想像とは異なる軽やかな走りがとても気に入っていたし、何よりバイクとは思えないスペックに、勝手に満足していたのだ。そして今回の試乗である。新型はネーミングに単に「R」がついただけではなく、スタイルも含めまったく新しいド迫力バイクに生まれ変わっていた。



まずルックスが完全に洗練されたものになった。先代は見るからにヘビークルーザーという、ちょっと野暮ったい印象があったが、3 Rはまったく別次元の、未来的なシルエットに変身を遂げた。水冷直列3気筒の基本レイアウトはそのままだが、2458ccまで大排気量化が図られる。バイクなのに2.5リッター!エンジンの中で、1気筒あたり800ccのピストンがドコドコと働いていると思うだけでワクワクしてくるではないか。



シャシー・フレームも一新された。乾燥重量291kgまで絞り込み、トータルで40kgも軽量化され、完全にスポーティ指向となった。前後のサスペンションはSHOWA製アジャスタブル仕様を採用。またライド・バイ・ワイヤの4段階ライディングモードやコーナリングABS&トラクションコントロールなどの電子制御機能も採用され、しかもブレーキはブレンボ製4ポットを取り入れるなど、本気の走りを期待させてくれるものばかりだ。専用開発されたタイヤはAvon製のCobra Chromeで、リアはなんと240mmのワイド仕様。片持ちスイングアームのデザインがかなりスタイリッシュ。しかもシート高はわずか773mmと低く、街中での扱いやすさは抜群だ。





さて試乗である。縦置きエンジンなので、アクセルをブリッピングする度に軽く車体が左に傾く。またシャフトドライブ特有のクセで、加速時にひょこっとお尻が持ち上がる感じも可愛らしい。ガレージから出すまでは、それなりに重たいバイクである。スリムではあるがそれなりに質量のプレッシャーを感じさせる。

先代比で約11%アップの最高出力167ps/6000rpmも然ることながら、221Nm /4,000rpmというバイクとしては驚愕の最大トルクにモノをいわせた怒涛の加速は特筆である。グイっとアクセルを捻ると、その手がグリップから離れてしまいそうな迫力。トラクションコントロールが必要な意味もよく理解できた。なるほど、これだけ太いリアタイヤが必要なわけだと妙に納得した次第。



ただし、ある速度域以上に乗ってくると300kg弱の車重がウソのように、ROCKET 3 Rはヒラリヒラリと自在な走りを楽しませてくれる。パワーはあるが御しやすい。慣れればハイスピードのコーナーでも勝手に曲がっていってくれる。この感覚はクルーザーでは決してない。というか、他のどのバイクにも似ていない、そんな独特の感覚だからこそ面白いのだ。

公表スペックで、ROCKET 3 Rの0-100km/h加速は2.89秒。これは4輪スーパーカークラスと同等以上のパフォーマンスだ。

誰でも乗れるバイクではないけれど、どうせ乗るならこんな超弩級に本気で挑みたい。


Specifications
横幅 889mm
全高(ミラー含まず)1065mm
シート高 773mm
ホイールベース 1677mm
車両重量 291kg
エンジン型式 インライン3気筒、水冷、DOHC
総排気量 2458cc
最高出力 167ps/6000rpm
最大トルク 221Nm/400rpm
燃料タンク容量 18L
変速機形式 6段リターン
タイヤサイズ(前・後) 150/80 R17・240/50 R16
ブレーキ形式(前・後) ダブルディスク・シングルディスク
メーカー希望小売価格(消費税込) 265万3000円

文:堀江史朗

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