「走るアールデコ」スタイリングだけが売りではない華麗なるコード810

アールデコの車が街を走る姿はめったに見られない。この華麗なるコード810を手に入れて、それを変えてみてはどうだろうか。
 
コード810は、元は"ベイビー・デューゼンバーグ"として構想されたが、1935年のニューヨーク・モーターショーで展示され、コードの劇的な再生を演出した。デザインしたのは、デューゼンバーグの数々の名車を手掛けたゴードン・ビューリグとそのチームだ。
 
ビューリグは、当時流行していた巨大なグリルを嫌っていたことで知られ、代わりに"コフィンノーズ"と呼ばれるフロントエンドを考案した。たしかにノーズは目を引き、それ以外の涙滴型のセダンボディを引き立てている。ボディには巧妙な仕掛けがぎっしり詰まっていた。特に愛すべきなのが隠れたヘッドライトで、ダッシュボードにハンドルが2本あり、それを回すと回転して現れる。


 
現代的な要素も多く、戦前の車という印象を与えない。たとえばドアのヒンジを内部に埋め込み、ラジオを標準で装備した。インテリアも、アルミニウムのダッシュボードや豪華なベロアで特別な雰囲気だ。


 
スタイリングや美しさだけが売りの車ではない。前輪駆動レイアウトや独立式フロントサスペンションをはじめとする先進的な技術も盛り込まれていた。ボンネットの下は、先行のL-29と同じライカミング製の4.7リッター V8エンジンだが、新しい4段のセミオートマチック・トランスミッションと組み合わされた。
 
当然ながらたいへんな評判を呼び、何千ものオーダーが入って、コードの復活は成功したかに見えた。1935年12月までに1カ月1000台の生産が見込まれていたが、実際には翌年になってもしばらくは1台も製造されず、結局、1936~1937年のモデルイヤーで1174台が完成したに留まった。遅れた原因は、巧妙なセミオートマチック・トランスミッションに製造上の小さな問題が次々に出たことだった。顧客はしびれを切らして関心を失い、オーバーン-コード-デューゼンバーグのグループ全体が1937年に倒産した。


 
収集価値ではスーパーチャージャーを搭載する812に及ばないものの、写真の810は、最初に登場したビバリーセダンという最もドラマチックなボディスタイルだ。色はダイヤモンドメタリックブルーで、"隅々まで使える"状態。最近イギリスに輸入され、DDクラシックスが6万9950ポンドで販売している。
 
ビジュアルで主張したいなら、この金額でこれに近いものは考えられない。アールデコの世界に足を踏み入れる意味でも、これ以上ないコストパフォーマンスであり、何よりも最高にエレガントだ。

編集翻訳:伊東和彦 (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Transcreation: Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) Translation: Megumi KINOSHITA

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