見事なバランスと傑作のストレート6エンジン│BMW M3の魅力を現代で

RM Sotheby's

人気を博したE30型3シリーズの後継モデルを造り出すのは並大抵の仕事ではないが、BMWは1990年のE36型でスタイリッシュに的を射抜いてみせた。しかし真の難問は、Mスポーツ部門が同じことをM3でも成し遂げられるかどうかだった。

E30型ほどレーシングカーとしてのホモロゲーション取得を意識する必要はなかったので、バランスの取れたロードカーに仕上げることに力が注がれた。こうして新M3が1992年に登場する。個性の変化を決定づけたのが6気筒エンジンへの移行だ。3リッターのS50エンジンはスムーズかつトルキー。可変バルブタイミングのVANOSによって吹け上がりは鋭く、多連スロットルのため、その働きが驚異的なサウンドとして現れる。

出力は標準でも286bhpと、先代のE30型から大幅なパワーアップを果たした。初期の3リッターモデルは、5段のマニュアルギアボックスで後輪を駆動する。まずクーペが発売され、次いでコンバーチブルとサルーンが1994年に登場した。国際デビューは1992年だったが、アメリカでE36型M3が発売されたのは1995年だ。エンジンは排ガス規制のため大きく異なり、出力240bhpだった。



1995年後半、BMWはE36型全ラインアップのマイナーチェンジをおこない、これに伴ってM3も改良型のEvoとなった。外観では、インジケーターがオレンジからモダンなホワイトのレンズに、ホイールが新しいディープリムに変わった。エンジンは3.2lに拡大され、新たに吸排気両方のバルブタイミングを変える"ダブルVANOS"仕様となって、出力は317bhpにジャンプアップした。もうひとつ特筆すべき変化として、マニュアルギアボックスが6段になり、新たにセミオートマチックの6段SMGトランスミッションが加わった。サルーンの生産は1997年に終了したが、クーペは翌年まで、コンバーチブルは1999年末まで生産された。

それまでに、様々な特別仕様車やホモロゲーションモデルが誕生している。M3 GTは、足元を引き締めて軽量化したヨーロッパ向けモデルで、356台製造。アルミニウム製ドア、異なるリアウィングとスプリッターを備え、3リッター エンジンは295bhpにチューンアップ、カラーはすべてブリティッシュレーシンググリーンだ。イギリスには右ハンドルのGT仕様が50台輸入されたが、アップデートは外観のみだった。ドイツ向けには出力325bhpのM3 GTRが10台造られた。これは1994年のドイツ・ツーリングカー選手権のホモロゲーションモデルで、アルミニウム製パネルや広いホイールアーチを備えた。オーストラリア向けのM3-Rはこれと似ているが少し控えめの仕様で、製造は15台。



アメリカ仕様は一般に少々見劣りすると評価されているが、例外がM3ライトウエイトだ。要するに装備をはぎ取った仕様で、遮音材や空調、分厚い大型シートを排し、ファイナルドライブが下げられた。アメリカのコレクターに高い人気を誇る。

最初のE30型のような"アイコン"と違い、E36型なら比較的手頃な金額でM3を所有できる。E36型は、その後のすべてに用いられるM3の様式を確立したモデルであり、今も実に痛快で優秀だ。他のMモデル同様、維持費は安くはないが、いまだに手の届く金額できちんとした1台が手に入る。しっかり整備されてきたものを入手して、大いに楽しんでほしい。

オクタン日本版編集部

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