イタリアの美の遺伝子 フェラーリ・ローマの「新たな甘い生活」

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光と影をあわせもつ多様な人のあり方
筆者が高校生の頃に映画『甘い生活』を初めて観た時には、洗練された上流階級やセレブのライフスタイルの美しさが強く印象に残った。しかし、長い時を経て映画を見直して、驚いた。この映画は、人間の光と影を立体的に映し出していたからこそ時代を超えた美が表現できたのだ。
 
主人公のマルチェロ(マルチェロ・マストロヤンニ)は、人生の岐路にある。文学を目指してローマにやってきたものの、タブロイド記者に甘んじている。同棲しているエマは彼と家庭を築きたいが、彼にとっては鬱陶しいだけ。彼女をほっぽり出しては、暇とカラダを持て余す富豪娘のマダレーナ(アヌーク・エーメ)とアバンチュールを楽しんだり、ハリウッド女優のグラマラスなシルヴィア(アニタ・エクバーグ)を女神と崇め追い回している。
 
表向きは軽いプレイボーイ。しかし、彼の内面は、家庭に身を落ち着けることも、文学の道に進むこともできずに葛藤していた。ある日、マルチェロはスタイナー(アラン・キュニー)という知的な上流階級の男性に出会い、自分の理想をスタイナーに投影するようになる。再び文学への情熱を思い出し、人生は変わっていくように見えた。しかし、スタイナーは突然、原因不明の自殺をしてしまう。茫然自失したマルチェロは、デカダンスを尽くすパーティの享楽に溺れていく。 

フェリーニは、光と影を合わせもつ多様な"ヒューマン"を、否定することないピュアな視点で描ききった。マルチェロには、生きている人そのものの息吹がある。自分や人にはこんなところはあると誰でも感じるだろう。 カンヌ国際映画祭でパルムドール(最高賞)を取り、フェリーニ監督と主演のマルチェロ・マストロヤンニの名声が不動のものになったのも納得だ。古代ローマでもルネッサンスでも、そしてこの映画の時代も、イタリア人はいつの時代も変わらない普遍的な"人" の有り様を深く受け容れる懐があるからこそ、人生の喜怒哀楽を謳歌できたのだ。
 
美のメッカ、ローマ

最後に、忘れてならないのは、イタリアならではの美術センスだ。芸術、食、マナー、ファッション。洗練された西洋文化は全てイタリアが本家本元である。16世期にカトリーヌ・ド・メディチがフランス王家に輿入れする際に、ルネッサンス全盛のフィレンツェからあらゆる職人を連れてきて文化を伝えたことは有名な話だ。フランス料理のルーツは"メディチ料理"だった。
 
上流階級から庶民まで、イタリア人は美しいものを細胞レベルで知っている。それを生み出し味わう術にも長けている。フェリーニ監督は『甘い生活』でリアリスティックな人間像を描きながら、幻想的な映像の美しさには妥協がなかった。 



知的上流階級のスタイナーの高級マンションに知的層の集まるサロンにやってきたマルチェロが、壁にかかっているジョルジオ・モランディの静物画に目を止める。「彼の絵は、偶然に描けるものではない」とスタイナーと会話するシークエンスは、いかにイタリア人の隅々まで美を愛でる感性が浸透しているかを表している。
 
2020年以降の"ラ・ヌォーヴァ・ドルチェ・ヴィータ(新たな甘い生活)" を体現する車としてフェラーリ・ローマは登場した。優美な文化で世界を魅了してきたイタリアの遺伝子は、"Roma"という名前とともに脈々と受け継がれているはずだ。
 
『甘い生活』の登場人物たちがローマで乗り回していそうなエレガントな曲線のフォルムの2シーターは現代的に2+クーペとして蘇り、美を愛する人がシートにつくことを首を長くして待っている。ローマの街が似合うのはもちろんだが、日本ならどこへ行こう?
 
ここまで書いてきたところで、ある事実を指摘したい。"Roma"は、左から読めば"ローマ"、右から読めば"アモール"("クピド"と呼ばれる愛の神のラテン語)なのだ。
 
苦さがあるから甘さがあることを知っている人は幸いである。それは神からもたらされた最高の愛なのだ。ローマから生まれた"ドルチェ・ヴィータ"の女神は"Ferrari Roma"という化身となって再生した。闇の中でひかる真珠のような、光と闇が融解するその愛に委ねる人には、未知の道が開けるのだ。



文:梅澤さやか(ムーサの芸術研究会 https://moikalab.com/、MOIKA GALLERY  https://moikagallery.com/、KAFUN株式会社  https://kafun.jp/)
Words:Sayaka UMEZAWA
Images:Reporters Associati & Archivi/Getty Images、Ferrari

文:梅澤さやか(ムーサの芸術研究会 https://moikalab.com/、MOIKA GALLERY  https://moikagallery.com/、KAFUN株式会社  https://kafun.jp/)

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