ワイン作りでシニアと共に地域活性を!Bioワイン作りを目指したブドウ栽培

2012年、約300坪の土地に合計500株のピノ・ノワール、シャルドネを植えてワイン作りをスタートさせた大里研究所。目的は、リタイアした人たちが健康で生き生きと活動できる場を提供することである。

アストンマーティン・レーシングのオフィシャルパートナーも務める大里研究所。同研究所が開発したパパイヤ発酵食品イミュナージュは、今や国内外から自然免疫を高める食品として高い評価を受けており、その効果はル・マン24時間耐久レースを戦ったレーシングドライバーが、レース後に自身でハンドルを握ってイギリスへ帰れるほど体力が残されることでも実証されている。その大里研究所の理事長であり長年ランドローバーの愛好家でもある林幸泰氏が、2012年から新たな試みとして展開を始めたのが、地元岐阜の豊かな土壌を利用したワイン作りである。
 
岐阜県岐阜市に程近い大野町は、バラ苗の生産量では日本一であり、また柿の王様と呼ばれる富有柿の産地としても全国に名を馳せている。ただし近年は農業従事者の高齢化が進み、働き手の減少により休耕地化する柿畑が増えてきて、林氏はその対策について大野町から相談を受けていた。認知症を防ぐことこそ日本が抱えるテーマである高齢化社会における医療費削減に不可欠だと考える林氏は、地元のシニア世代のために新しい社会活動のステージを創造する目的で、Bioワイン作りを目指したブドウ栽培を大野町に提案したのだ。



「我々の目的は、地域のシニアの方々に気持ちよく働ける生きがいの場所を提供することです。リタイアした人の中には社会との接点が少なくなり、生産活動に寄与できなくなる不安から、元気をなくしていく方もいる。逆にシニアのみなさんが楽しく集って働ける場所さえあれば健康維持に役立ち認知症予防になると思い、Project ORI WINEを始めたのです。できあがったワインは、このプロジェクトに関わってくれた皆で楽しみ、一部はチャリティに出品することも考えています。初めから商業目的ではないので、生産性に拘る必要はないんです」(林理事長)。
 
大里研究所は、現在地元シルバー人材センターと契約し、このプロジェクトの草刈りを始めとするブドウ栽培のサポート作業を依頼している。取材当日、実際に働かれていたシルバー人材センターの方々にお話を伺う機会があった。高橋和良さんは陽に焼けてとても若々しく見えるが、現在72歳とのこと。50年以上に渡って富有柿の栽培をされてきた農業のベテランである。

「ブドウ作りは初めてですが、大里研究所のスタッフに教わりながら、いろいろと工夫をしながら作業を進めています。当初ここでは普通の農薬ではなくボルドー液を使うことが不思議でした。でも昔ながらの製法を守っているということを知り、それも嬉しく感じています。たわわに実っていくブドウを見ていると癒されます。実は私はお酒が苦手です。でもこの農園でみんなで作ったワインなら、一口楽しんでみたいと思っています」。
 
ボルドー液とはフランスで約120年前に誕生した農薬で、硫酸銅と消石灰を原料とする。防カビに効果的であり化学成分を含まないので、オーガニック農法でも認められている。


 
林氏は、こう語る。「本来、高温多湿な気候の日本は、シャルドネやピノ・ノワールといった欧州系品種のブドウ作りはあまり適してはいません。特にピノ・ノワールは、土壌を選び冷涼な気候を好む上、果皮が薄く病気になりやすいデリケートな品種。世界トップクラスのブドウ栽培とワイン醸造の学部を有するカリフォルニア大学デイヴィス校のブドウ栽培学の専門家に学ぶため2015年に招いたホアキン・フラガ氏にも、この大野町で化学的な農薬や肥料を使わずにピノ・ノワールを育てることができれば世界的にも稀な事例になると言われました。私たちは、そんな夢に地元のシニアの方々と一緒にチャレンジしています」

「一方で、この地は扇状地で石灰質なので、ミネラルが豊富なフランスのブドウ園の土壌によく似た性質を持つことがわかっています。ブドウ作りにとっては奇跡の場所といえます」
 

文:堀江史朗 写真:サジヒデノブ Words:Shiro HORIE Photography:Hidenobu SAJI Special Thanks:Jaguar Land Rover Japan、Jaguar Land Rover Gifu

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