フェアレディZプロトタイプを前に、スポーツカーを熱く語る

Photography: Sho TAMURA



フェアレディZを開発するにあたり、田村はこの5年間、世界中のフェアレディZファンの声に耳を傾けてきた。それは本当に耳がすり切れるほどだったという。だからここに出来上がったばかりのフェアレディZプロトタイプは、まったくのブランニューでありながら、どこから見ても“フェアレディZ”であることをほのかに主張しているのだ。

現在の日産車全般に共通するデザインルールとは様々な点でディテールが異なるなど、かなりの“掟破り”をおかしてまで、このプロトタイプは“フェアレディZらしさ”を大切にして作り上げられている。特に大事にしたのはリアからのスタイリング。「こだわったのはバックシャンであること。公道で後続車から眺めたときのリアスタイルこそ重要なんです」『あのカッコいい車は一体なに?』そう思ってもらえれば成功だいうことだ。



リア周りのラインや造形は、デザイナーたちと何度何度もトライアルを繰り返したという。いまのプロトタイプに、たとえば大きなウイングなど“余計なパーツ”が何も装着されていないのは、ベースのデザインに余程の自信があるからに違いない。

フェアレディZは1969年S30型の誕生から現行モデルにいたるまで、世界で累計180万台がオーナーのもとにデリバリーされた。これは本格スポーツカーの販売台数としては記録的な数字である。対してGT-Rはスカイライン時代を含めても10万台に届いていないのだ。

「スペック偏重の日本の自動車マーケットだけをみていると、分からなくなることも多い。フェアレディZはそれくらい世界で愛されている」(西川)

「フェアレディZは、その高い運動性能も然ることながら、デザインの美しさや運転したときのぴったり感など、総合的な魅力によって世界中で180万人ものひとに選ばれてきたのです。だから次のフェアレディZは今までのフェアレディZを愛してくれたオーナーの皆さんが、再びこの新しい"Z"を笑顔で迎えてくれることを期待して作り込んでいます」(田村)

完全にこのままのデザインでデビューするかはもちろんわからないが、すでにこのプロトタイプの評判はすごぶる高い。いまたった1台しかないこのプロトタイプモデルは、近いうちにリアルに世界の自動車ファンを魅了していくことは間違いない。



まずは今までのフェアレディZオーナーからその高評価は拡がり、やがてその友人知人が多くのファンとなると田村は考える。「新しいフェアレディZが販売されたあとに、もしかしたら高速道路の渋滞で、後ろについたドライバーを魅了できたら最高ですね」(田村)

田村は続ける。「どんなにこれから自動車が進歩したとしても、それでも“ダンスが好きな自動車愛好家“は残り、未来永劫、“一緒に踊り続けられるスポーツカー”を求め続けると思う」つまり、いま日産自動車が作るスポーツカー、フェアレディZは、単にイメージリーダーとしてのフラッグシップモデルを掲げたいわけではもちろんなく、自動車という文化の継続性を世に問うているのかもしれない。



「もし新しいフェアレディZが世に受け入れられなかったとしたら、それは僕の思い描いてきたフェアレディZという文化が、一つの時代に幕を下ろすことになるのかもしれない」(西川)

西川は熱い。

「でも、もちろんそれは終焉を意味するのではなく、すぐに第二幕が開けるのかもしれない。そんな未来は、今語る必要もない。まだデザインのプロトタイプの段階。これからの世界中のZファンの期待はモノ凄いはずだ!」


文:籠島康弘 words:Yasuhiro KAGOSHIMA 写真:田村 翔 

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事