Mission Completed ! インディ500で2勝目の快挙を遂げた佐藤琢磨の「走る理由」と原点

Photography:Kazuki SAITO



「走る」ということではもちろん、2度インディ500のチャンピオンに輝いた佐藤琢磨に、インディカーのドライブについても聞かないわけにはいかない。世界で屈指の長い伝統をもつ自動車レースは、これまで例外なく5月に開催されてきたが、今年は8月23日へと順延。

世界一といわれる30万人もの観客を集めるスポーツイベントは、初めて無観客を余儀なくされた。未曾有のパンデミックがアメリカの都市を次々と襲う中、走ることを奪われてしまった佐藤はいったいどんな心境にいたのだろう。

「開幕戦(フロリダ州セントピーターズバーグ)が走行前に突然中止になり、その後アメリカが世界最大の感染国になるとは思ってもいなかったです。いつ再開されるかわからないし、入国制限が始まる可能性もあったからアメリカに残ろうと決めて、レースどころではなくなってましたよね。これからどうなるんだろうというすごい不安な気持ちで、全然レースをしたいとは思えませんでした。人々が苦しんでいる姿を見て僕も胸が苦しかったし、医療従事者の懸命な活動を尊敬し、頼る気持ちと、当時は何もできなかったから、感染を拡大させないようステイホームを呼びかけるしかありませんでした」


 
やっと今シーズンが始まったのは6月7日のテキサスだったが、前年のNASCARレース用に特殊塗料が施されていた路面で予選走行直前に突然マシンがスピン。運悪く1日だけの開催という強行スケジュールだったことから、マシンの修復が間に合わなかった佐藤は決勝を断念せざるを得なかった。インディ500を前に、同様のスーパースピードウェイ仕様のインディカーでレースを戦うのはこのテキサスだけだったのだが、佐藤は決勝を走らないままインディアナポリスに入り、2度目のチャンピオンに輝いたのである。
 
レース後のインタビューで筆者が特に印象に残ったのは、「これまでのインディ500で最も楽しく走れました」というひとことで、緊張感が一瞬ほどけた彼のうれしそうな表情がそこにあった。「初優勝した2017年の車は(メーカー毎にエアロパッケージの異なる)スペシャルだったし、ある意味絶対的なフィーリングというよりも、相対的に他のチームと比べて僕らはアドバンテージがありました。でも(同一エアロパッケージの)今年はそういった意味での差はまったくなかったので、最終的に今もっているものをすべて、完璧な状態にまとめ上げてひとつのバランスというか、ハーモニーにすることができたのはこれまでにない感覚だったし、それができたからこそ、それまで最速だったディクソンでさえ最後は追いつくことができなかったのかなと思います」

文、写真:斉藤和記 Words & Photography:Kazuki SAITO

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