様々な進化を遂げた 注目のアウディ新型モデル2車種を同コースで試乗

e-tronスポーツバック55クワトロ1st エディション。車両本体価格は1346万円。




そうしてe-tronスポーツバック55クワトロの静粛さとパワフルさを実感した(感銘を受けた)直後に、今度は、A8 55 TFSIクワトロに乗り換えて、同じコースを辿ってみた。A8のエンジン・バリエーションには、3リッターV6、250kW/500Nm(55 TFSIクワトロ)、4リッターV8が338kW/660Nm(60 TFSIクワトロ)と、420kW/800Nm(S8)の3種がある。個人的にアウディのフラッグシップモデルであるA8は、このサイズのアッパーミドル級サルーンの中で最も運転して楽しい存在だと考えている。

A8のWBには、標準の3000㎜と3130㎜(A8L)が存在する。このボディカラーはムーンライトブルーメタリック。

現行のA8は、4世代目(それ以前にアウディV8が存在)にあたり、2018年から日本市場でも発売されていたが、2019年後半から、新A8にとって最も注目されるべき技術であった、「プレディクティブ・アクティブサスペンション」がオプションで装着可能になった。既存の可変制御ダンパー付きのアダプティブ・エアサスペンションに加えて、4輪のホイールストロークを電動モーターによって個別にコントロールするという技術である。1100Nmのトルクを発揮するモーターは、48Vマイルドハイブリッド用電源で駆動され、強・弱・オフの選択が可能である。

シックにまとめられたインテリア。高度なドライビングサポートが備えられており、先行車両や対向車を幻惑させずに夜間の運転をサポートするHDマトリクスヘッドライトは秀逸。


「プレディクティブ・アクティブサスペンション」を備えたA8の車体姿勢はフラットのひと言に尽きる。乗り心地を最も優先したショーファーモードで、工事中の不整路面を試してみても、路面をトレースするロードノイズでそれとわかるくらいだ。スポーティーな走りを求めるなら、ダイナミックモードを選択すれば、ロールが皆無であるかのような姿勢でコーナーをクリアする。まさに「アクティブサスペンション」の名に相応しい。また、静粛性についても優れており、遠くから届くV8の息づかいを感じる程度だ。

こうしてe-tronスポーツバック55クワトロと、A8 55 TFSIクワトロをほぼ同一の条件下で乗り比べてみると、SUVとサルーンというジャンルを隔ててきた境が、スタイリング以外に取り払われたように感じられてきた。どちらも頂点に向かって律儀に完成度が高められていて、短時間の試乗では、私には要望点は見当たらなかった。

試乗車の車両本体価格は1552万円。これに総額433万円のオプションが組み込まれ、そのうちプレディクティブ・アクティブサスペンションは84万円である。


e-tronスポーツバック55クワトロには、フォーマルカーとして必須事項な静粛性に優れ、遅れて販売がはじまるという“スポーツバックでない”e-tronは、後席のヘッドスペースが広いことから、全天候型ショーファーカーとしても使用できると思えた。また、A8はドライバーズカーとして魅力的だったが、ショファーカーとしても一級の存在に成長していた。個人的な蛇足ではあるが、A8L(Lwdモデル)のサスペンションとシャシーを備えたe-tronクワトロが存在したのなら、静粛性との乗り心地において、最も好ましいVIPカーになるのではないか、そう思えてならなかった。


(文=オクタン日本版編集部)

オクタン日本版編集部

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