途中では逮捕のハプニングも!鮮やかで美しい写真が表現しているものとは?

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アメリカのフリーウェイを彩る典型的アイコン、トレーラーにフォーカスした“American Trucks”という写真集が存在する。スイスの写真家Ulysse Fréchelinによる作品である。

アメリカのオープンロード文化と自由を連想させるトレーラーは、単なる輸送手段であることを超越して、アメリカ国家とその国民のアイデンティティーの象徴となった。Fréchelinは写真集“American Trucks”で、クローズアップやカメラアングルを駆使しており、一見しただけでは被写体が何であるか明確にわからない。輝くマフラー、荘厳なラジエーターガード、曲線が美しいフェンダー、固定されたボンネットなどのトラクターの一部分や、滑らかだったり、ウェーブのあるトレーラーのパネル、ホイールの艶々したハブキャップとずんぐりしたボルトなど、トラックを全く新鮮な視点で表現し、新しいアイデンティティーを与えている。猛暑のアリゾナとニューメキシコの州境のトラック停車場で2週間以上に渡り撮影を行ったという。


 
「ある有名なアメリカメーカーのための仕事でロサンゼルスに到着した際、土壇場になって撮影が中止になった。2週間ほどの余裕ができたので、思いつきでニューメキシコのサンタフェ方面に旅したんだ」 

「アメリカ人画家ジョージア・オキーフがニューメキシコの風景について熱く語っていたのを思い出して、見てみたくなったんだ。アビクィウにあった彼女がかつて住んでいた家も訪ねてみたかったけれど、たどり着くことはできなかったよ」

芸術行脚に向かったFréchelinを方向転換させたのは、サンタフェに向かう途中のフリーウェイで幅を利かせていたピータービルト、ヘンドリクソン、そしてマックをはじめとする数々のトレーラーであった。トレーラーに魅せられた彼は、アリゾナのホルブルック、そしてニューメキシコのギャラップやアルバカーキの停車場でそれらを写真に収めた。

スイスの詩人Blaise Hofmannがこれらトレーラー停車場の様子を、「輝くボンネットの向こうに、焼けたアスファルトの匂い、クラクションの騒音、排気管から出る煙」と “American Trucks”の序文で的確に表現している。Hofmannは続いてFréchelinが旅行中に出会った人物たちを「思ったことをすぐ口にするトラック運転手たちの言い争い…メキシコ人、南部人、ネイティブアメリカン。彼らはエキストラだ」と描写している。

Fréchelinの記憶に特に残っているのは、ある出会いだ。彼を貨物泥棒だと思った警察官に、鉄道線路脇で逮捕されたのである。Fréchelinは、「自分が写真家だという証拠をいくつか示して、あらゆる限りの個人情報を伝えた」と思い出しつつ、自分の仕事を終えるための最大の難関は、実際この「煮え立つような猛暑」から逃亡しなければならないことだったと打ち明けた。

彼はこの写真集で紺碧の空を映し出すとともに、排気装置のメタルの輝き、ウェストコースト バックミラー、運転席のハンドルという被写体をトレーラー本体に劣らないほど見事に活写した。ラジエーターガードのうっとりするようなモチーフを描写し、クロームボンネットの飾りのクローズアップに官能性を吹き込んでもみせた。光沢のある立派な黒タイヤのスナップを見ていると、ラバーの匂いを感じるほどである。しかし、Fréchelinの写真はレモンイエロー、ライムグリーン、ストロベリーチーズケーキの赤と白、シャーベットオレンジなど、フレッシュで弾けるような色彩が際立っている。

オクタン日本版編集部

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