「なるほど!」な特徴の数々 文化的で洗練された世界に一台のフェラーリ・テスタロッサ

Photography:Christian Martin for Artcurial

この記事は『「イタリアの無冠の王」と称された男に捧げられた特別なフェラーリ・テスタロッサ』の続きです。

それからというもの、スターンはフェラーリに関する資料や記念品などの収集を始め、比類のないコレクションを築き上げた。


「近所に住んでいた知人がタイに移住することになり、彼が持っていた年鑑やカタログといったものを買ってくれないかと言ってきた。フェラーリの歴史に興味を持っていた私はもちろん承諾した。その後、ホートンズ・ブックスのベン・ホートンと父親のマイクと出会い、私のコレクションを見た彼らは非常に素晴らしいものがあると言ってくれた。その後、私はベンからいくつか貴重なものを買った。ベンはアーカイブを作る際に大きな手助けをしてくれたんだ」
 
アルベルト・アスカーリのヘルメットからエンツォの古いパスポートといった個人的な書類に至るまで、彼のコレクションは膨大であり、どれがお気に入りかと訊ねても答えは難しいようだ。「素敵なものがたくさんあるんだ。歴史の証拠となるようなものや、フェラーリで何が起きたかを深く知る手掛かりになるものだ。エンツォは目標にまっしぐらに進む人物だった。本当の天才だよ」
 
もちろん車のことを忘れるわけにはいかない。70年代末から80年代初めにかけて、スターンは250GTO(シャシーナンバー3757GT/現在はニック・メイソンが所有)だけでなく、スターリング・モスがツーリスト・トロフィーを制した2台の250GT SWBの両方を手に入れたのだ。「スターリングはランチを食べに家に寄ってくれた。後で素敵なカードを送ってくれた。彼のカードには1960年SWBの写真があり、その上に"ロナルドへ 何事も中途半端にしてはならない" と書いてあった。まさしくその通りで、そのカードは宝物だ」
 


ほんの少し話しただけで、スターンの情熱と知識が途方もないものであることは明らかだ。アニエッリのテスタロッサのいわば後見人となるのにこれほど相応しい人間もいない。「この車のヒストリーは以前から知っていた」とスターンは説明した。「私のアーカイブにはネイサン・ビールという学芸員がいるんだ。驚異的な知識を持ち、フェラーリに関する書物も多数書いている。彼と一緒にレトロモビルに出かけたが、もともと手を出すつもりはなかった。だが、ひと目見るや、これは1980年代のアイコンではないかと考えた。ヒストリーもさることながら、走行距離も少なくコンディションも抜群だった」

「この車のデザイナーのレオナルド・フィオラヴァンティにも会った。彼は当時ピニンファリーナのデザイン・ダイレクターであり、フェラーリととても親しい間柄だった。彼の話によれば、製作中にアニエッリがピニンファリーナを訪ねたという。フィオラヴァンティが『見てください。シートの背後に一対のカウルを設けて、その中にフードの開閉機構を納めるつもりです』と言うと、アニエッリが振り向いて『いやいや、私は真っ平にしてほしい』と告げたという。『雨が降ったらどうするんですか?』とフィオラヴァンティが尋ねると、『傘を持って行くから平気だよ』と答えたという」

編集翻訳:高平高輝 Transcreation:Koki TAKAHIRA Words:James Page Photography:Christian Martin for Artcurial

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