北へ、南へ、シトロエン2CVと30年|第12回 ちょっとした修理で北へ!

いつかやろう、と思っていたことをやらないでおくと後悔するのは人生だけではない。古い車こそやるべきこと、つまりちょっとした不具合の修理を先延ばしにしていると痛い目に遭うのは何回か前のこの連載に書いた通りだ。

このところ筆者の2CVには小さな「やるべきこと」が積み重なっていた。いつかやろう、と思っていたから例によって部品は調達済みだ。ある土曜日の朝、今日は特に予定がないことに気がついた。書かなくてはいけない原稿や作らなくてはならない記事の締切りにもまだ少々の時間的余裕がある。よし、今日がその日だ、さっそく修理に取り掛かろう!
 


さっそく修理に取り掛かろう、と威勢よく言ったものの、今回のやるべきことは新車時からのエンジマウントとミッションマウントの交換、グラグラするドアノブと動きの悪いヒーター切り替えの修理だ。特にマウントの交換は自分の手に負えないことがわかっていた。だから筆者は2CVに乗って北を目指した。シトロエン仲間で借りているガレージで手練れの友人に手伝ってもらう、いや直してもらうのだ! 



かれこれ20年くらい前から借りているガレージは埼玉県北部、文化圏的には北関東に属するエリアにある。横浜の自宅からだと片道約100km、高速と一般道で2時間弱、ちょっとしたドライブだ。以前は国道17号線をひたすら走っていたが、最近は県道77号線からフラワー通りへと抜けるルートをよく使う。



秋のこの時期、北関東ののどかな風景の中を2CVで走るのはとても楽しい。稲刈りの終わった田んぼ、ハウス栽培の花農園、そんなほどよい田舎風景の中を爽やかな風に吹かれながら走る。時々現れる少しタイトなコーナーを3速のアクセルワークだけで駆け抜ける。



シトロエン仲間で借りているガレージには内にも外にも多くの車が置いてある。外にある車は「雨天未使用雨ざらし」というやつだ。内にある車の多くも埃を被っていて、最近流行りの「バーンファインド(納屋モノ)」のようだ。

仲間の多くが以前は毎週末のようにここで車いじりを行っていたが、いつしか家庭や仕事の都合で、ひとり、ふたりと徐々に足が遠のいていった。時間ができたら直して乗ろう、そんな気持ちのまま20年近くが経っている車も多い。でも仕事や家庭で忙しいのは何よりじゃないか。毎日が日曜日になるには、みんなまだ早い。 



そんな中で友人のbは今でも週末になるとここによく通っている。彼の2CVは2つ上の写真にあるホワイトリボンのタイヤがイヤらしい赤いスペシアルだ。自分の2CVをいじるだけでなく、どこかから拾ってきたボロボロの2CVをキレイに直して、世に送り出す慈善事業(?)も行っている。先ほどの写真の右側にある赤黒のチャールストンが、今まさに修復途中のものだ。そういう事情でbは頻繁にパーツの個人輸入を行っているから、いつもそれに便乗させてもらっている。そして週末はかなりの確率でガレージにいるから今日も多分大丈夫だろうと、ここに来たのである。



ちなみに「b」はネット黎明期のハンドルネーム由来のあだ名だ。本連載によく登場するHらしまさんやMりやさんのような仮名(笑)ではない。少しばかり年上だし部品の調達でお世話になっているから、いつもはせがちゃんと呼んでいて、対面でbと言ったことはない。まあ記事だし実名に近いせがちゃんよりはbの方が良かろう。そんな彼の最近のトピックはクランクシャフトの折れたエンジンを直したことだ。2CVでここが折れるのは大変に珍しい。どうやったら折れるのだろうか。いずれにしてもとても貴重な写真である。



馬弓良輔

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