フェラーリよりも素晴らしいハンドリングを誇る!深く印象に残るボンドカー

Photography:Justin Leighton

この記事は『「ジェームズ・ボンドのように」ロータス・エスプリをダンスさせながら』の続きです。

その次は、私がどうしても訪れたかったコルティナ・オリンピック・アイススケート場に向かった。映画では、夜のシーンでカッパー・ファイアのエスプリが登場する。ボンドはエスプリでここに乗り付け、車を停めると、助手席に協力者を残したままリンクに入り、そこで女性と会う。ところが車に戻ってくると、協力者はシートにもたれかかったまま息絶えている、という場面だ。ドン・マクラクランがしたためた報告書に、このシーンを撮影した際のエピソードが記されている。

「スケート場に到着したときにロジャー・ムーアが運転していたように見せかける撮影だ。雪はトラックで運び込まれたもので、スケート場のアプローチに注意深く敷き詰められた。撮影は午後8時まで続いた。とても寒かった。いや、−25℃だから、極寒というべきだろう。ロジャー・ムーアと私はスノーブーツを履くことを許されず、両足を包み込んでいたのはごく普通の靴だった。"ゾウの足"のようなブーツではターボを運転できないからだ。おかげで午後6時には足が痛み始め、午後7時にはかじかんできて、午後8時には感覚が失われていた。暖かいホテルに帰るまで、足は凍ったように冷え切っていた。そして痛みは何時間も続いた。映画作りとはなんとも興味深いものだ」


 
私たちが到着したとき、スケート場は明るい陽射しに包まれていたので、彼らのような心配をする必要はなかった。あまりにいい天気だったので、そこから街を抜け出し、コルティナの周囲を取り囲む断崖絶壁を見物しに行くことにする。道は思ったよりも混雑していたが、ほとんどのスキーヤーはリフトが営業しているスキー場に向かっているようだ。彼らは一カ所に集まることなく、数kmも離れたスキー場に散らばっていく。

そして山を巡る小道に辿り着くと、そこには目を見張るような景色が広がっていた。なにしろ007映画の撮影に使われたロケーションである。ロータスをどこに停めても"インスタ映え"する写真が撮れた。それにしても、エンジンカバーの上に2組のスキー板を固定して急な山道を登っていくエスプリの姿を、あなたはご覧になったことがあるだろうか?
 
山頂に着くと、左手になだらかなピスト(雪を固めたスキーの滑走路)が広がっていた。周りにはほとんど人がいない。私は勇気を振り絞り、真新しいピストの上を走り始めた。もちろん、ひどい結果に終わっても不思議ではなかった。なにしろ道は一本しかなかったからだ。
 
危ういところだったが、「エスプリは超軽量だから大丈夫」という私の理論が正しいことが証明された。もちろん、下り坂で停車する直前には、タイヤをロックさせないように気をつけなければいけなかったが⋯。一度停めてしまえば、車から降りて、周囲の息を飲むような景色と、直線的で切れのいいエスプリのボディシェイプを堪能することができた。なんて美しいデザインだろう!

編集翻訳:大谷達也 Transcreation:Tatsuya OTANI Words:Harry Metcalfe Photography:Justin Leighton

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