美と捉えるか否か?車のデザイン史に残る斬新なデザイン 3選

Photography:Max Serra



ランボルギーニ・マルツァル
最も偉大なショーカーの一台は、これまでほとんど人の目に触れずに眠りについていた。貴重なワンオフ・プロトタイプ、ランボルギーニ・マルツァルがそれである。
 
ランボルギーニのエンブレムを付けたその車は、若きマルチェロ・ガンディーニがベルトーネのために生み出した最新作であり、その前年のミウラと同様、闘牛にちなんで「マルツァル」と名付けられていた。最も有名なショーカーになりつつあったその車は4名分のシートとミドシップの2リッター6気筒エンジンを備え、ほとんどガラスで出来た宇宙船のように見えた。



マルツァルはその年の3月のサロン・ジュネーヴのベルトーネ・スタンドに初めて登場し、話題をさらった。観客はマルツァルの異様なボディを信じられないような表情で見つめていた。ベルギーのメーカーであるグラバーベルの協力を仰いで製作した4.5平方メートルのガラスとガルウィングドアによって、コクピットは透明な泡のように見えたのだ。

「ショーでの評判に胸を撫で下ろした」と語ってくれたのはマルチェロ・ガンディーニである。「見る人が驚いて、口をあんぐり開けてくれればショーカーは成功作と言える。実は私はちょっと心配していたんだ。というのも、ジュネーヴに向けて送り出すほんの数時間前、ベルトーネのスタジオで床掃除の男が咥えたばこで箒に寄りかかりながらゆっくりと車を見渡し、がっかりしたというように首を振ったのを見かけたんだ」

マルツァルのプロジェクトは1966年夏、ミウラ成功の熱気が冷めない頃に始まった。ジュネーヴで世の中を驚かせるのがベルトーネの伝統であり、ガンディーニは翌年用のショーモデルとしてその頃のスポーツカーとはまったく異なるものを考えていた。



「ショーカーの美しさとは、デザイナーに許された自由を映すものだ。ひらめきは必要なく、ルールにとらわれることなく、ただ行うだけだ。私はガラスで覆われたガルウィングドアの4シーターを作りたかった。ラフスケッチを描き、サンターガタの友人に技術的な手助けを求めた。先日亡くなったエンジニアのパオロ・スタンツァーニだ」

重いドアを開け、コクピットに身体を落とし込むと、そこはまるで光の国。ボディカラーとガラスとメタリックシルバーのレザーの組み合わせのおかげで、たとえどんよりとした曇りの日でも真夏の陽ざしの下にいるように感じた。シートは快適だが、まったく無防備に裸で座らせられているよう。

現在はオーナーがおり、格式高いコンクールイベントで走行している姿を見ることができる。

オクタン編集部

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