まさに「大スター」!史上最も美しい車に数えられるランチアの物語

Max serra



魅惑的な美しさではスパイダーに若干劣るものの、実用性は向上し、1958年までに371台が製造された。どちらのバージョンも当時としては速く、最高速は180km/h。それを支えたのが、フランチェスコ・デ・ヴィルジリオが設計した世界最初市販型V型6気筒エンジンである。2.5リッターのB24では110bhpの出力を発生した。映画の撮影には2台のB24が使われた。完璧なステータスシンボルとして選ばれたのである。たしかに同時代のアルファロメオ・スパイダーより適任だ。

監督のディーノ・リージは、車に大枚をはたかなければならなかったと始終ぼやいていた。その正確な金額はもはや知る由もない。というのも、当時は申告された購入額に応じて課税額が決まったため、たいてい新しい書類には偽の金額が記されたのである。このページで紹介したアウレリアB24の場合、申告された購入額はたったの10万リラ(現在の1200ユーロ相当)だった。これはちょっと信じがたい金額だ。1957年の新車の定価は240万リラだったのだから。たとえ5年落ちの中古車でも、1962年なら50万リラほどの価値はあったはずだ。



「確かなのは、私が支払った金額が"有名な10万リラ"より多かったことだよ」と笑顔で話すのは、イタリア人コレクターのアダルベルト・ベリベだ。彼は2001年から、映画で使われたB24の"管理人"を務めている。しかし、ベリベは劇中車を探していたわけではなかった。

「私は6、7歳の頃から、ランチア・アウレリアB24にゾッコンだった。育った村には1台だけあって、オーナーは医者だった。私はそれを何時間も眺めて過ごしたよ。いつか1台手に入れようと心に決めたのは、そのときだ。2001年に、ついにその日がやってきた。ミラノ近郊で1台売りに出ているのを親類が雑誌で見つけてくれてね。広告には、『映画で使われたまま』とあったけれど、それは車そのものではなく、モデルについての説明だと思っていた。いずれにしても、あまり関心はなかった。特に好きな映画でもなかったからだ。実のところ、初めて観たのは車を買ったあとなんだ」いうまでもなく、今やベリベはこの作品のエキスパートだ。

「映画を観て、この車についてたくさんのことを学んだと認めざるを得ないよ。映画撮影については、さらに多くのことを学んだ。1962年に撮影監督を務めたアルフィオ・コンティーニと一緒にすごす機会が2012年にあったんだ。残念ながら彼は3月に92歳で亡くなった。彼から聞いたところによれば、制作会社は2台のランチア・アウレリアをローマ近郊の中古車ディーラーで購入した。1台は現在私が所有するチェレステ・クラッシコ(ライトブルー)、もう1台はヴェルデ(淡いグリーン)だった。映画はモノクロで撮影されたから、スクリーンでは色の違いが分からなかったんだ」


2台のアウレリアの特徴は・・・後編へ続く!

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事