忽然と姿を消した!アバルトの「ショーカー」が発見されるまで

Photography:Dirk de Jager

この記事は『「デザインの傑作」と称された一台│シャシー・ナンバー205-104の真相』の続きです。

このニューヨーク・ショーの直後、車は忽然と姿を消した(一説にはメリーランド在住のピーター・シャーマンなる人物がヴォーンから買い取ったといわれる)。
 
発見されたのは1982年のことで、メリーランド州アシュトンの納屋に205-104はあった。その車のリアウィンドウには、1958年の日付のあるリットン・インダストリーズ、メリーランド・デヴィジョンの駐車票が貼られていた(訳註:リットン・インダストリーズはアメリカの大手軍需企業)。発見者のラス・ベアーはこう語っている。



「1982年の晩夏、今となっては相手の名前を思い出せないのですが、電話を受けました。用件は、納屋にある沢山のアルファロメオのジャンクパーツを処分するが買い取らないかといった内容でした。実のところ、あまり興味が湧かなかったのですが、友人のフランク・サレーミと一緒に、40マイル離れた納屋に検分に行ったのです。ところが想像以上の収穫がありました。そこには見知らぬ車もありましたが、それは処分を望むリストには入っていませんでした」

 

「その車が気になったので、その後、カメラを持参して出直しました。撮影した謎の車の写真をプリントして、これを識別できそうな人に送ってみました。すると、アバルトについての本を書くための情報を集めていた、パット・ブレーデンから返信があったのです。なんと、パットは車を買いたいというのです。1990年代終わりの頃の話です」

「結局、私はその納屋にあったアルファのドナー車から"いくらかのもの" を回収しましたが、その際、奇妙な部品も発見しました。後席で枯れ葉とゴミに埋もれた一対のサイドウィンドウ、クロームトリムが3ピースです。はじめは、それらを地域のゴミ捨て場に持っていくつもりでしたが、私はすぐに納屋にあった別の車のものではないかと考えました」

「パットは納屋のなかにあった謎の車、アバルト・ギアを手に入れましたが、それは部品がほとんど失われた単なるスケルトン状態でした。彼は、1983年に『アバルト・フィアット・シムカ・ポルシェ・ストリートレース・レコード』を上梓した後、2002年に亡くなりました」
 

編集翻訳:小石原耕作(Ursus Page Makers )  Transcreation:Kosaku KOISHIHARA(Ursus Page Makers ) Words:Massimo Delbò Photography:Dirk de Jager

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