忽然と姿を消した!アバルトの「ショーカー」が発見されるまで

Photography:Dirk de Jager



その後の車の行方は分からなくなった。ラス・ベアーは納屋で見つけたアバルト・ギアのものらしいパーツをずっと保管しておいたが、車の行方を積極的に追求することはしてはいなかった。そうこうしているうちに、ニューヨーク州イサカの友人ダグラス・ファウラーから連絡があった。

「ダグラスはレストアベースのめずらしい車を集めることが趣味で、"楽しく安く"が彼の条件でした。そこで私は、彼に御誂え向きのレストアプロジェクトがある、1953年アバルト・ギアを見つけられたらの話だが、と付け加えました。もし彼がアバルト・ギアを発見して入手することができたら、ウィンドウとクロームトリムは私が持っているからと伝えておきました」
 
驚いたことにダグラスは車を見つけ出した。その時の所有者であったハワード・バナスザックは、明らかに売りたがっていなかった。そこで彼は、バナスザックを発見者であるラス・ベアーと引き合わせることにした。



「ラスはバナスザックとの会話を楽しんでいました。私がいくつかのパーツを保管していることを明かすと、バナスザックは買い取りたいといい、私は適正価格を提示し、彼は合意しました。これで、やっと元の車の元に戻ることになったのです。私はまず厳重にパッキングを施したクロームトリムを送り、ウィンドウは友人たちが休暇を使って、コネチカットからはるばるフロリダに住むハワードまで運んでくれました」
 
その後、2010年になって、205-104はカナダ・カルガリーのグラント・キンゼルが入手し、彼がリサーチとレストアに5年以上を費やして完成させた。彼はプロフェッショナルではないがレストアの経験はあった。

「2015年のペブルビーチでの反応は圧倒的だった」とキンゼルは回想する。「これは1954年以降、公には目にできなかった歴史的にも有名な車で、1998年のコンコルソ・イタリアーノにレストア途中の状態でこの木型が現れた時は、エンスージアストにとってはキリストの再臨のようだった」と回想している。
 
2017年8月、205-104はRMサザビーズのオークションに掛けられ、現在の所有者であるブラッドレーとバズ・コーキンズの元に納まった。彼らはアバルトを2019年のアメリアアイランド・コンクールに出品し、1948〜1953スポーツ&GTクラスの審査員のハートを奪って優勝を果たした。RM サザビーズの売り立てカタログにあった" ready for future concours prizes"は正に本当だったのだ。

編集翻訳:小石原耕作(Ursus Page Makers )  Transcreation:Kosaku KOISHIHARA(Ursus Page Makers ) Words:Massimo Delbò Photography:Dirk de Jager

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