フランスならではの粋を感じるDS3クロスバックE-TENSE

Photography:Kazumi OGATA

DSブランドの目指す道が、ここへきて一気にクリアになってきたと感じる。やはりDS 7クロスバックとDS3クロスバック、2台のSUVを相次いで送り出したことが大きいだろう。
 
DSのミッションをひとことでいえば、自動車におけるフレンチラグジュアリーの復権だ。第2次世界大戦前、アンリ・シャプロンやフィゴニ・エ・ファラスキといったカロシエが、ドラージュやドライエなどを素材に腕を振るった。その妖艶な姿を、今にふさわしい姿で蘇らせることを使命とする。 

その車づくりについてDSでは、サヴォアフェール(Savoir-Faire)という言葉を使っている。フランスではものづくりの職人はクリエイターでもあり、独創的なデザインと熟達の技術を融合させ、芸術的な作品を生み出してきた。こうした匠の技を車に投影したのがDSなのである。この流れに乗って新たに日本に導入されたのが、このブランド初のEVとなるDS3クロスバックE-TENSEだ。


 
E-TENSEの名称はDSが電動化車両に与えるもので、フランスではDS7クロスバックも登場しているが、こちらはプラグインハイブリッド車(PHV)になる。市街地走行が多い小型車はEV、長距が得意な中大型車はPHVという棲み分けは理にかなったものだ。
 
電動化に際しては、2018-19シーズンから参戦しているフォーミュラEの経験もフィードバックしている。DSはこのフォーミュラEで、2シーズン連続でドライバーズ・ティーム両タイトルを獲得している最強集団でもある。
 
今回導入されたDS3クロスバックE-TENSEはガソリン車のDS3と基本設計を共有しており、プラットフォームも共通だ。しかし実車に対面すると、醸し出す雰囲気はちょっと違う。ガソリン車ではクロームメッキだったフロントグリルやリアのガーニッシュをマットシルバーとし、グリルもマットグレーとしているからだ。おかげでモダンでクールな雰囲気が強まった。フランスならではの粋を感じる。
 


インテリアはパリの中心を東西に貫く大通り、リヴォリにインスパイアされたホワイトインテリアが鮮烈だ。ルーヴル美術館のピラミッドを思わせるダイヤモンドを配したインパネ、機械式腕時計の伝統文様クル・ド・パリが描かれたセンターコンソールを、一層華やかに見せてくれる。
 


走行用バッテリーは前後席下とセンタートンネルに配置しているので、居住性はガソリン車と同等だ。それでいて満充電での航続距離はJC08モードで398km。これだけ走れば実用上十分だと思う人が多いだろう。一方前輪を駆動するモーターの最高出力は136ps、最大トルクは26.5kgmと、後者についてはガソリンエンジン2.6リッター クラスに匹敵する。


 
ドライブモードはエコ/ノーマル/スポーツの3つ。136psを発揮できるのはスポーツのみで、ノーマルでは8割、エコでは6割のパワーデリバリーとなる。さすがにエコでは穏やかだが、ノーマルなら不満はなく、スポーツでは爽快な加速が得られる。

回生ブレーキの調節はDレンジとBレンジを切り替えることで行う。Dレンジはガソリン車に近い自然な減速感なのに対し、Bレンジは明確に速度が落ちていくが、e-208よりマイルドにしつけてあるとのこと。エレガンスへのこだわりを感じる。

乗り心地は重厚だ。コンパクトSUVとしてはソフトなガソリン車に対し、揺れが少なく落ち着いたフィーリングで、1580kgという車重をおとなっぽい振る舞いに生かしている。そしてハンドリングもおとなっぽい。


 
EVはガソリン車に比べて前が軽く重心が低いので、それを強調した走りに仕立てがちだ。でもE-TENSEは、コーナーでの安定感で低重心を伝えつつ、身のこなしは過敏すぎず、前輪のトラクションに必要な重みを確保したうえで曲がっていく。
 
サヴォアフェールで培った技をちりばめたデザインと、フォーミュラEチャンピオンならではの落ち着いた走りの融合。DSにしかできないアヴァンギャルドとエレガンスの融合を、DS3クロスバックE-TENSEから感じることができた。


文:森口将之  写真:尾形和美

文:森口将之  写真:尾形和美

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