世界を舞台に戦うレディの素顔 いまもっともF1に近い女性ドライバーにインタビュー

世界と日本を行き来しながらレースに参戦しているタチアナ・カルデロン選手に、隠れ家的江戸前寿司店で独占インタビュー。アスリートとしての強靭でストイックなイメージだけではない、彼女の柔らかな素顔をお届けしよう。

この記事が誌面に載るころはクリスマスが目前に迫っているのだろう。クリスマスといえば一年前のイヴはタチアナ・カルデロンのレース人生を変える大きなクリスマスプレゼントを手にした日だった。それは世界でも最もF1に近いレースと周知されている全日本スーパーフォーミュラ(以降、SFと略)のシート。父親と観戦したF1レースでドライバーのファンパブロ・モントーヤに憧れ、F1マシンを駆る夢を見た少女はそれに最も近い舞台に立つチャンスを女性として初めて手にしたのだ。
 
あれから一年、COVID-19の影響により8月のSF開幕戦に出場してからの約2カ月半、タチアナはヨーロッパから出国できなくなった。11月中旬、第4戦でやっと復帰することができたのだが、今度は最終戦まで日本に留まらざるを得ない状況に。それでも彼女のSNSを覗くと日本の街角で、またときには美味しい食事を前に微笑む姿に安堵する世界中のファンも多いだろう。そんな彼女が久しぶりに日本でのレースを終えた某日、彼女が世界一美味しいという寿司店で近況をうかがうことができた。


 
WOW! 日常の普段着はジーンズにスニーカーが多いという。が、この日のタチアナは色鮮やかなブラウス姿で現れた。洋服はスペインやイタリアなどでも買うそうで、「そりゃあお金があれば色々と欲しいものはある。ファッションに興味を抱くのは女性ならみんな同じでは?」と、20代の女性らしい一面を見せてくれた。
 
大好きなお寿司をつまみながら話しをしてくれる彼女の"目"はサーキットでヘルメット越しに見るのとはまったく違い、とても穏やかで柔らかい。しかしこの困難な状況下で挑むレースへの覚悟と複雑な心境は伝わってきた。3月、初めてSFマシンをドライブする前の下馬評ではタチアナが最終戦まで持つか…とすら言われていた。ところ開幕戦で有名ドライバーたちとのバトルも注目も集め完走を果たし、彼女にとって2戦目となった先日のレースでも順位こそ高位ではなかったものの潜在能力をアピールし走りきった。
 
ただ、チーム(『Three Bond Drago CORSE』)は4年ぶりのSF復帰。しかも2台体制で戦うチームが多いなか、こちらはタチアナのマシン1台のみ。データも少ない状況でドライバーも日本でのレース未経験。それなのにコロナめ… タチアナ不在の2戦は国内で参戦経験も豊富なドライバーが戦い、マシンの開発も継続してくれていたそうだ。その間タチアナはル・マン24時間レースを含むヨーロピアン・ル・マンシリーズ(ELMS)に参戦。暑いコクピット内で一回あたり2時間を複数回ドライブすることが肉体的/精神的にもトレーニングにもなっていたのではないかと言う。無駄はない。

文:飯田裕子 写真:前田晃(MAETTICO ) Words:Yuko IIDA Photography:Akira MAEDA(MAETTICO)

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