"今"味わう、極上のグランドツーリング│BENTLEY FLYING SPUR

Photography:Ken TAKAYANAGI

ベントレーは、2030年に全ラインナップをBEVに移行することを宣言しており、内燃機関を生産しないブランドとなる。しかし今はまだ、ベントレーらしさを堪能できるW12とV8エンジンを楽しむことができる。ゴージャスな新型フライングスパー(W12)で、"今"乗っておくべき極上のグランドツーリングの魅力を再確認する。

先だって発表されたベントレーの未来戦略「ビヨンド100」には、2030年に全ラインナップをBEV(バッテリー電気自動車)に移行する、と明記されていた。つまり現時点で12気筒エンジンを世界で最も数多く生産するブランドが、次の10年で内燃機関を全く生産しないブランドになる。そう宣言したのだ。自動車産業の頂点に君臨し続けてきたベントレーが、次の100年もそうであることを約束したというわけだった。
 
もちろん、一気にそうはならない。21年、つまり来年にはPHV(プラグインハイブリッド)モデルがあと2つ増え、25年にブランド初となるBEVが登場し、26年には全てのラインナップの電動化(PHVとBEV)が整って、という段取りになっている。電動モデルと、生産台数や走行距離が比較的少なく、走行の範囲やルートも概ね一定する超高級車の世界の親和性はとても高い、というのが持論だが、ベントレーはいち早く革新的な未来戦略を立ててみせたのだ。
 
その一方で、今はまだベントレーのピュアな内燃エンジン W12とV8、を積んだ最新モデルを楽しむことができる。何を言いたいのかというと、幸運にもベントレーを購うことのできる人たちは、これまた幸運なことに自動車産業始まって以来の大きなパラダイムチェンジを真っ先に経験することになるということ。これからたった10年の間に。だからというわけでもないのだけれど、今、内燃機関テクノロジーの粋を尽くしたベントレーの12気筒エンジンを味わっておくことには意味があるように思う。21世紀になってからのブランド躍進のキーテクノロジーの一つがW12エンジンであったことは論を俟たない。

強化された新設計の6リッターツインターボチャージドW12エンジン。組み合わせる8段デュアルクラッチトランスミッションを組み合わせる。最高出力635PS、最大トルク900Nmを発揮。公表されるデータは0-100km/h 加速3.8秒、最高速度333km/h。

 
635ps&900N mを発揮する6リッターW12TSI エンジンを積んだ新型フライングスパーが今回のパートナーである。クルーではすでにV8を積んだグレードの生産も始まっているらしいが、それはまたのお楽しみにとっておこう。ボディ色の白にはいろんな白があるけれど、待ち合わせ場所にやってきたフライングスパーのそれは、はっきりとゴージャスな白だった。グレイシャーホワイトと呼ばれる色みだけがそう見える理由ではない。パネルや付属パーツそれぞれの質感からチリの合わせ具合、デザインそのものまで、およそ見栄えに関わる全ての共同作業によって"ゴージャス"に映るのだ。神々しくも見えてくる。目の前に停まった白い巨体を眺めていると、パイプオルガンの奏でる荘厳な音楽が頭のなかで鳴り響いた気がした。

新型ではフルサイズのパノラミックガラスサンルーフが選択可能だ。ルーフ全体を覆うガラスルーフだが、前方パネルがチルトして後方にスライドして、固定式の後方のパネルに重なるようにルーフが開く仕組み。15色からチョイス可能な電動ブラインドはアルカンターラを採用している。

 
すぐに乗り込んでしまうのはあまりに惜しい。しばし、この美しいサルーンを眺めようじゃないか。コンチネンタルGTと同様、FRベースのプラットフォームを新たに得て、エクステリアのダイナミック感がいっそう増した。フロントホイールアーチの位置が前進し、いかにもドライビングが楽しめそうだ。リアはといえばフェンダーラインがまるでクーペのように力強く、いろんなアングルから眺めたくなるほどにグラマラスだ。峰の恐ろしくシャープに立ったリアフェンダーのキャラクターラインを印象的に撮影しようと、何度も違う角度でスマホのシャッターを押してしまった。ルーフがブラックアウトになっているのはパノラミックサンルーフを装備したからである。

文:西川淳 写真:高柳健 Words:Jun NISHIKAWA Photography:Ken TAKAYANAGI

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