スポーツ感覚で乗る次世代クルーザースタイルをインディアンのチャレンジャーに見た

大型のフロントカウルとタンクのラインが美しくシンクロするボディデザイン。ハンドルが大きく手前に引かれていることもよくわかる

クルーザー。かつて“アメリカンバイク”と呼ばれたそのバイクカテゴリーは、技術的そして思想的な進化によって、スタイルとパフォーマンス、さらにはバイク市場における立ち位置を進化させている。そのクルーザー・カテゴリーを牽引しているのがアメリカ最古のバイクブランドであるインディアンモーターサイクル(以下インディアン)であり、ここで紹介する「チャレンジャー」はその最新モデルだ。

豪華装備の大型クルーザーモデルをデビューさせたのち、排気量1200ccのスモールクルーザーを加え、さらにはフラットトラックレースのファクトリー・レプリカマシンを発売。そしてスポーツできるクルーザーという新機軸をこの「チャレンジャー」によって構築。ディテールを見る



かつてのアメリカンバイクのイメージを根本から変える、新しいスタイルの誕生

アメリカンバイクと言えば、ドコドコとしたエンジンの鼓動を感じながら、高速道路のような緩やかなカーブの道をゆったりと流す、というのが日本におけるイメージだろう。しかしこの「チャレンジャー」は大排気量エンジンと電子制御テクノロジーによって、大型カウルやリアフェンダーと一体化した大型バッグを持つ大きな車体でも、街中や高速道路をキビキビと走る。いや、そのキビキビは切れ味を増し、ズバッと走ることができると言っていいだろう。それを実現しているのは高剛性なフレームと前後サスペンション、そして高性能なブレーキだ。

出力特性とトラクションコントロールの介入度が異なるスタンダード、スポーツ、レインの3つのライディングモードを装備する。

長時間のライディングで快適性を追求するには、ある種のルーズさが必要だ。過度になりすぎないパワーやエンジンレスポンスやフレーム剛性。エンジンの振動をライダーに伝えないための、エンジンやハンドルなどの各種ラバーマウントシステムなどである。そうやって開発されたクルーザーモデルは、魔法の絨毯にでも乗っているかの如く、快適なバイク旅を提供してくれる。しかし一方で、バイクの最大の魅力である、エンジンや車体をコントロールしているダイナミックな感覚が乏しくなってしまうのだ。

その点、この「チャレンジャー」は排気量1767ccのV型2気筒エンジンを搭載しながら、ビッグボア/ショートストロークによって燃焼効率と吸排気効率を高めた、そもそも振動が少ないエンジンを、軽量で高剛性なアルミ製フレームに、緩衝材無しのリジッドマウントしている。

排気量1767ccの「PowerPlus」エンジン。インディアンは3種類のエンジンを有し、この「PowerPlus」は中間排気量ながらピストン径は最大となる、いわゆるビッグボア/ショートストロークエンジンとなる。

それによって多くの大排気量クルーザーに感じる、高速走行時の車線変更やワインディン走行時のコーナーリング中、さらにはブレーキング時の、車体の重さやライダーのアクションに対する車体の反応にタイムラグがない。こんなに大きなカウルとリアバッグを持っているにもかかわらず、である。
 
これはまさに、スポーツバイク的感覚。「チャレンジャー」は、新しいカタチのスポーツバイクを作り上げたのである。


文:河野正士 写真:高柳健 Words:Tadashi KONO Photography:Ken TAKAYANAGI

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事