親子で550スパイダーをドライブさせる│受け継がれていく情熱

Porsche AG



そして1956年、ヴォルフガング・ポルシェは弱冠12歳で、ツッフェンハウゼンでラインオフした1万台目のポルシェを運転することが許されたのであった。当時について、「前の晩は興奮してよく眠れなかったことを今でも覚えています」と現在77歳の彼は話す。

そんな彼らのスポーツカーへの情熱が一段と高ぶるのが、グロースグロックナー山岳道路なのだ。ポルシェ・アウトモビル・ホールディング SE およびポルシェ AGの監査役会会長を務めるヴォルフガング・ポルシェは、山頂へと伸びるその道路に時間が許す限り頻繁に足を運び、決まった場所で記念写真を1枚撮る。車は変わっても、背景はいつも同じというわけだ。

ヴォルフガング・ポルシェが今日運転し、すでに何度も被写体となっているホワイトの550スパイダーが持つ歴史も興味深い。もともとフェリー・ポルシェのプライベートカーであったもので、当時ポルシェレース部門の責任者であったフシュケ・フォン・ハンシュタインの手に渡り、ツェル・アム・ゼーのアイスレースをはじめとする様々なレースイベントに出場した。一族の伝統行事であったGPアイスレースも2019年以降、息子フェルディとヴィン ツェンツ・グレガーの手によって注目イベントとして復活している。父ヴォルフガングは2019年、GP アイスレースの第一回リバイバルイベントにこのホワイトのスパイダーで登場し、アイスバーンを走り抜けた。



「GPアイスレースを観戦しに来てくれた熱気あふれる多くの若い観客の姿を見ると、車に対する情熱が自分と同じ世代の人々にも受け継がれていることが分かります。だからこそ数々の革新技術が応用されたポルシェタイカンがEV セグメントにおける新たなマイルストーンを打ち立てたことに大きな喜びを感じます」とフェルディはいう。

「私は大きな放牧地と200頭のピンツガウ牛を飼育し、酪農業を副業としています」とヴォルフガングは笑う。「私たちはパンを焼いたり、蒸留酒を作ったり、肉も自ら処理しています。また狩猟も行いますから、自給自足の生活を営んでいるわけです」と誇らしげにいう父親の言葉に、息子のフェルディが「鶏はまだ飼育していませんが、近々養鶏も始める予定です」と補足する。

ヴォルフガング・ポルシェは、「しっかり地に足を着けて生きていくことが大事です。その重要性を子供たちにも学んで欲しいと常に考えてきました」という。

天気がいい日であっても楽しい体験だけでなく、時には挑戦的なドライブも要求してくるグロースグロックナーの山岳道路。550スパイダーのステアリングホ イールを握っていればその楽しみも倍増するだろう。ヴォルフガング・ポルシェがこの日の朝、元来たワインディングロードを下り家路へと向かう前に、「いつもの場所でお決まりの記念写真を撮ってくれないか?」と、写真家のシュテファン・ボーグナーにお願いをした。

オクタン編集部

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