落札率100% 時計オークションの活況 高額落札を呼ぶ"Selling from Japan"

時計のオークションは、2020年のコロナ禍という状況にも関わらず落札率100%という活況をみせている。フィリップスが11月に開催したジュネーヴ・オークションはそれを象徴する結果となった。その要因には、現代らしい話題作りもあるようだ。

2020年の時計業界は、ウォッチーズ&ワンダーズ(旧SIHH) やバーゼルワールドといった大規模展示会がコロナ禍によって中止されるなど、非常に大きな打撃を受けたが、その一方で、時計オークションはたいへんな活況を呈している。
 
そのことを象徴するのが、先日行われたフィリップス・ジュネーヴ・オークションだろう。出品された時計が軒並みエスティメイトを超えて落札され、1954年製のパテック フィリップの「ワールドタイム」モデルには、なんとCHF4.991ミリオン(およそ5億7500万円)という高値が付けられた。
 
さらに特筆すべきは、同オークションと併せて開催されたテーマオークション「Retrospective:2000–2020」だ。フィリップスは貴重な時計を単に競売するだけでなく、時計愛好家および趣味人のライフスタイルや感性でカテゴライズされたテーマオークションを、定例オークションとは別カタログを作成する形で、定期的に行っている。今回は2000年から2020年に生みだされた時計を「Retrospective:2000–2020」と題し、テーマ性、物語性に富んだ、そしてチャリティーへの寄付アイテムも一部まじえた、実に魅力的なカタログを作りあげた。その結果なんと、落札率100%を達成、総売上もCHF13.5ミリオン(約15.5億円)に至ったのだ。

「直近20年の時計を集めただけで何故?」といぶかる方もあるかと思うが、高級機械式時計のブームを牽引してきた名作・名機のほとんどが、実はその20年の間に誕生している。新興独立系ブランドの躍進や名門ブランドの栄枯盛衰の物語など、エポックメイキングなこの20年間を読物・資料としても成立するクオリティと秀逸なデザインでカタログ化するなど、他のオークションハウスとは異なる企画力および発信力がコレクターの共感を呼び、この大きな成功につながったといえる。これは今後のフィリップスの時計オークションの有力な特色のひとつとなっていくに違いない。
 
さて、こうした活況はロレックス、パテック フィリップという時計オークションにおける二大看板ブランドの相変わらずの堅調が大きな支えとなっている。投資目的や資産としての入札という構造もあるのはもちろんだが、文頭に触れたように、今年発表予定の新作がまばらだったため新作に向かうはずのバジェットがオークションに向けられたこともその要因といえる。
 
そして、もうひとつ無視できない要素として、「インスタグラム」があげられる。アジア地域、特にシンガポールやインドネシアといった東南アジアの富裕層で、SNSを通じて活発なコミュニケーションをとる30代、40代の入札者が著しく増加しているのだ。ラグジュアリーなライフスタイルの画像投稿において、ステイタスやファッションのシンボルとして腕元の時計を欠かせないアイコンとする、いわゆる「インスタ映え」需要である。二大看板ブランドに加え、リシャール・ミル、F.Pジュルヌ、フリップ・デュフォー、オーデマ ピゲなど、リストショットが映える時計が好調なのも、そうした理由によるところが大きいのかもしれない。日本でもこうした若いインスタ富裕層は生まれつつあるようだが、まだ少数であり、むしろ"Selling from Japan"と呼ばれる日本出品が、付属物完備の美品が多いことから歓迎され、高額落札を続ける傾向はいまだ根強いため、気になる時計をお持ちの方は、一度査定を受けてみるのもおもしろいかもしれない。



Special Watches
今回のジュネーヴ・オークションにて出品された、注目の2本をご紹介。

Zenith Lupin The Third Unique Piece
2020年 ゼニス ルパン3世 ユニークピース


記事でも触れたテーマ・オークション「レトロスペクティブ 2000‐2020」に出品された、マニアの心をくすぐる逸品。日本アニメの代表作のひとつとして世界的なファンも多い「ルパン三世」。そのファースト・シリーズの第1話「ルパンは燃えているか…?!」で、人気キャラクターのひとり、次元大介が着用していたゼニスの「エル・プリメロ A384 」をアニメに忠実に再現した「Lupin The Third Unique Piece」と名付けられたワンオフモデル(一点物)である。


 
このちょうど一年前の2019年、ゼニスは、「エル・プリメロ 」ムーブメント誕生50周年記念事業の一環として、次元大介着用のこのモデルを、インデックスやブレスの細部に至るまでアニメに描かれたとおりに再現した50本の日本限定モデル「エル・プリメロ A 384 リバイバル ルパン三世エディション」として発売したところ、ゼニス史上初のアニメキャラクターとのコラボによる限定品ということも大きな反響を呼び、即日完売となった。
 
だが実際のアニメでは、ブランドの商標権に配慮し、文字盤のZENITHのロゴの"Z"と"H"を消し込んだ"ENIT"という表記がなされていた。このワンオフピースでは、その消し込みまでも忠実に再現するという、実にマニア思いのアレンジが加えられており、日本限定モデルの定価のおよそ20倍という高額での落札を記録することとなった。


Patek Philippe Calatrava Ref.96
1937年 パテック フィリップ カラトラバ Ref.96

 
パテック フィリップの代表モデル「カラトラバ Ref. 96 」。1937年製で、イタリアの老舗ジュエラー、エベラール・ミランとのダブルネームの黒文字盤に、ホワイトのグラフィックが非常に特徴的なセクターダイアル、センターセコンド、ステンレススチール・ケースという、パテック フィリップのヴィンテージモデルの中でも、最も人気を呼ぶ特徴を多く備えた非常に貴重なタイムピースである。
 
加えて、この個体は信じられないほど保存状態が良く、後年の研磨痕もない無垢のスティール製ケースとオリジナルのリューズを保持しているうえに、本来は6時位置のスモールセコンド仕様であるキャリバー、cal. 12 - 120のムーブメントの裏側に2つのギアトレインを追加してセンターセコンドへ仕様を変更した、大変めずらしいムーブメントを搭載したモデルであることも、収集家の目を引いた。もちろん、パテック フィリップのアーカイヴとエベラールの販売履歴から、これら特筆点のすべてが完璧なオリジナル仕様と確認できる筋目正しい"初(ウブ) 品"である。

「昔、いとこから買った時計を見て欲しい」と、イタリアのフィリップス査定会場をふらりと訪れたご老人がお持ちだったもので、プレス資料等で画像が出た瞬間から、このような誰も知らない未知の個体がまだまだ眠っているのかという驚きとともに、問い合わせが相次いだ。31mm径という小ぶりなサイズは現在の人気モデルの主流から外れているうえに、複雑機構の搭載もないシンプルな3針時計であるにもかかわらず、異例の高額落札となった。


査定会のご案内
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PHILLIPS(フィリップス)東京
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www.phillips.com/watches 
e-mail:tokyo@phillips.com


PHILLIPS
PHILLIPS は1796年にロンドンで設立された老舗オークションハウスとしてジュネーヴ、ロンドン、ニューヨーク、香港、台北、ソウル、そして日本オフィスを構える。時計、20世紀およびコンテンポラリーアート、デザイン、エディション、写真、ジュエリーを取り扱う。2014年11月に時計部門を設立し、5月: ジュネーヴ・香港、11月: ジュネーヴ・香港、12月: ニューヨークの年5回、オークションを開催。現在、PHILLIPS 時計部門は世界のマーケットリーダーとして活躍。日本では全国無料査定会ツアーを年2回開催し、東京オフィスでは日本人スペシャリストによる査定がいつでも可能。あなたのお手持ちの時計の現在の価値や、オークション出品及び入札のご質問など、どうぞお気軽にお問い合わせください。

文:KITAMURA(WATCH MEDIA ONLINE 編集人) 画像:フィリップス Words:KITAMURA(WATCH MEDIA ONLINE Editor ) Images:PHILLIPS

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