レースのスリルを追体験できるインディ500ミュージアム

アメリカに夏の訪れを告げる恒例の一大イベントが、インディアナポリス500だ。初開催は1911年で、毎年、メモリアルデーの祝日を含む5月最後の週末に行われる。インディ500は現在も世界トップクラスのレースである。マリオ・アンドレッティや、ボビーとアルのアンサー兄弟、エリオ・カストロネベス、そして佐藤琢磨など、数々のチャンピオンが参戦してきた。
 
コースは伝統的に"ブリックヤード" と呼ばれている。これは1911年に、砕石とタールの上に320万個の舗装用レンガが敷き詰められたことから来ている。その後、コースはアスファルトで覆われたが、オリジナルのレンガを36インチの幅で残してスタート/フィニッシュラインとし、レースの黎明期にオマージュを捧げている。
 
ファンが年間とおしてレースのスリルを追体験できるのが、インディアナポリス・モータースピードウェイ・ミュージアムである。名高いサーキットのインフィールドにあり、歴戦の傷やへこみもそのままに展示された70台のレーシングカーが、この苛酷なイベントの歴史を伝える。
 
そのうち20台以上がインディ500優勝マシンだ。壁沿いのケースには、レーシングヘルメットやプログラム、磨り減ったタイヤ、トロフィーといったメモラビリアがいっぱいに並ぶ。また、優勝マシンに取り囲まれるようにして、羨望の的であるボルグワーナー・トロフィーが鎮座する。高さ1.5mのスターリングシルバー製で、インディ500の歴代優勝ドライバーの顔が立体的な浮き彫りであしらわれている。オリジナルはここに保管され、ウィナーにはレプリカが贈られる。


 
ヒストリック・ヴィークル・アソシエーションによって国の歴史的車両に登録されている誉れ高い24台のうち、2台がこのミュージアムに収蔵されている。1911年にインディ500初代ウィナーとなったマーモン・ワスプと、ワインレッドの1938年マセラティ8CTFだ。"ボイル・スペシャル" として知られるこのマセラティは、1939年と1940年に連覇を果たし、インディ500 史上最も成功したマシンと考えられている。


 
ほかにも、ただひとりインディを4回征したA.J.フォイトを記念して、フォイト"コヨーテ" が展示されている。歴史に残る4度目の優勝をもたらした1977年のマシンだ。その横は、1972年にトップでラインを横切ったマーク・ダナヒューのマクラーレンM-16B 。このマシンは来たる時代を予告していた。ボルト付けした空力的なウィングで、当時の最速記録162.9mphを樹立したのだ。
 
100回目となる2016年(第1回は1911年だが、戦時中は開催されなかったため)には、ルーキーのアレクサンダー・ロッシがホンダエンジンで優勝した。ロッシはフィニッシュラインを横切ったところで燃料が尽きたため、牽引されてビクトリーレーンにたどり着き、ウィナーが飲むことになっている伝統の牛乳を味わった。
 
一方、2011年にイギリス人ドライバーのダン・ウェルドンが自身2度目の勝利を飾ったダラーラ・ホンダは、高速レースの危険性を痛切に思い出させる。ウェルドンはその年、ラスベガス・モータースピードウェイでの事故で、33歳で命を落とした。前途有望なドライバーの早すぎる死だった。
 
驚くべきことに、こうした歴史的マシンのほとんどは今も走行可能だ。レース前のイベントに引っ張り出されて、サーキットを周回するのが恒例となっている。

「触ってください」と書かれた"オッフェンハウザー・パーツふれあい動物園"もある。伝説のオッフェンハウザー製エンジンのカムシャフトやクランクケースなどを子どもたちがじかに触れて感じられるコーナーだ。"オッフィー" のテクノロジーを搭載するマシンは、1930年代から1970年代まで、オープンホイールのレースを席巻した。
 
ミュージアムからもレースコースやグランドスタンドを見渡せるが、ミニバスツアーで全長2.5マイルのオーバルを肌で感じてみるのもオススメだ。スタート/フィニッシュラインでは、大好きなウィナーの真似をして、歴史的なオリジナルコースのレンガにキスすることもできる。牛乳は自分で持参する必要があるけれど。

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) Translation:Megumi KINOSHITA

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