クラシック ボルボP1800を現代に再解釈!レースでも活躍する一台

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シアン・レーシングがレストモッドを施したボルボ1800に乗るため同社を訪ねると、シアンのマネージング・ディレクターであるハンス・バースはWTCRの予選を観ている最中であった。私がP1800をドライビングさせている間に、シアン・レーシングはポールポジションを獲得し、翌日には世界チャンピオンとなった。

レースモデルからロードモデルへの進化が信用高いということは滅多にない。シアン・レーシングはP1800をレースに出場させていないが、この60年のクラシックカーの再解釈によって、最盛期を迎えたレースチームのダイナミックな性質が実を結び証明された。そして、豊富な経験とともに、ノウハウをロードへと置き換えるのである。(ボルボがポールスターを電気自動車モデルにブランド化する前、シアンは一時期ポールスターであり、そのポールスターはボルボをレースに出場させ、ロードモデルの修理もしていた)。ロードモデルへのノウハウの置き換えはお分かりの通り、ウェットな路面での確かなフリクションや制振における制御と弾力性、そしてなによりもエンジン性能から見て取れる。本質的には(文字通り同じでないにしても)、2017年WTCC覇者のS60の強力な414馬力を発揮する2.0リッターターボのエンジン性能から高められている。



しかしながら、やはりロードマナーへの敬意があり、直線の加速を重視したチューニングが施されている。ターボによって最大出力は7000rpmで発揮され、最大トルクは控えめながらも335lb-ft /6000rpmが引き出され、それが重要なポイントとなっている。極めて敏感なスロットルによって、ターボパニックによる突然のアクシデントを起こさず、グリップを感じることができる。トラクションコントロールもABSも付いていない990kgのボルボは、製造に1年を要し、50万ドル(約5170万円)もの費用がかかる。もちろん、素晴らしいマシンではあるが、今までにオーダーされた台数は2台である。ワールドツーリングカーの規定がより厳しいTCRの規定に変更されたことがきっかけで、このプロジェクトはスタートした。シアン・レーシングのエンジニアは、どのようにしてP1800でシンガーやアルファホリックに対抗しようか思い悩んだ。

1964年のオリジナルの要素が残されていることは嬉しい。ルーフピラーにはスチールが使用され、新たなフロアパンもかつてのファクトリーで作られたようだ。しかしボディはオールカーボンで、デザインにも少しひねりが加えられている(リアエンドは短くなり、フィンも控えめに、ガラスは完全に新しいものだ)。カーボンボディは、まるでDNAのらせん構造のように捻れたボディを補強するために、サイドシル等の強化も図られた。さらに新しく独立式のリアアクセルやダブルウィッシュボーン式サスペンション、調整可能なジオメトリーを備えている。また、4気筒のAPは、18インチのマットカラーのアロイホイールの裏に隠されているだけでなく、オリジナルのP1800とは全く異なる位置にある。



インテリアにはバケットシートやチタン製のロールケージを備え、非常にレーシーではあるものの、パッド入りレザーやゴージャスなウールライクの刺繍も見られ、GTカーの味付けも随所に感じられる。クラッチもよくできており、パワーステアリングは意味のある重さはあるが適度に軽い(パワステであるからドライブが台無しにされるということはない)。



また、長めに作られたシフトは気持ちよく入ってくれる。そしてギアボックスはホリンジャ―製 5段MTで、ギア比が高めに設定されているため、機械式のトラクションコントロールがあるかのように、エンジンから溢れ出るパワーを十分に使うことができる。ブレーキは際限なく強力であり(私はブレーキをロックさせようと試みたものの失敗してしまった)、乗り心地も素直で、曲がりくねったウェットな道でもP1800は見事な走りを見せるだろう。しかし、とりわけこのような夢中になれるドライビングを可能にするのは、直線的なパワーをこの美しくバランスのとれた、かたいシャシーに届ける方法と、徐々に滑り出すメルセデス仕様のピレリ P Zero である。

私はシアン・レーシングに戻り、安全機能が付いてないにも関わらず、激しいドライビングをしても全くもって安全であったとハンスに伝えると、彼は「まあ、それがボルボだよ」と、ただただ言うのであった。

Words: BEN BARRY (訳:吉田龍介)

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