北へ、南へ、シトロエン2CVと30年│第16回 2CVのカーシェア? その1

前回はパリの2CV観光ツアー&レンタルサービスを紹介したが、実は日本でも2CVを借りることができる。しかも最終の1990年スペシアル、ワンオーナー、色は白…、つまり筆者の2CVである(笑)。

うちの2CVは「Anyca(エニカ)」に登録をしている。エニカはDeNAが2015年9月から開始した個人間カーシェアリングサービスだ。2019年からはSOMPOホールディングスとの合弁会社「DeNA SOMPO Mobility」に運営が移行され、2020年9月現在の会員数は35万人、累計登録車数16,000台・登録車種数は750車種にものぼる。

会員となって車を共同使用するカーシェアサービス自体は、タイムスやオリックスなどが積極的にサービスを展開している。特に都市部にお住まいの皆さんにはお馴染みだろう。住宅街のコインパーキングやオフィス街の企業駐車場など貸し出し場所が近所にあって便利だし、料金体系も短時間の設定があるからレンタカーよりも手軽に利用できる。

「Anyca(エニカ)」(https://anyca.net/)のPCページ。*利用にはスマホアプリが必要です

エニカの場合は個人が所有する車をシェアする点が画期的だった。以前からビジネスアイディアとしては存在していたけれど、何かと面倒くさい日本において法規制や保険の問題を突破し、サービス実現にこぎつけたDeNAの取り組みは非常に素晴らしい。 

DeNAの資料によれば時間に換算した自家用車の稼働率はわずか3.4%に過ぎないそうだ。つまり96%以上の時間は駐車場で惰眠を貪っていることになる。愛車エンゲル係数の高いカーガイにとって、なかなか不都合な真実である。

この数字を見て、1年だけ結婚情報誌の編集長をしていたときのツライ記憶が蘇ってきた。確か「新婚生活のお金節約術」というようなタイトルの記事だった。監修を頼んだフィナンシャルプランナーとメンバーが打ち合わせて出来上がった記事のゲラには、カットすべき費用として自動車が槍玉に上がっていた。そしてフィナンシャルプランナーは「車は家計の大敵です。手放すか軽自動車にしましょう」とアドバイスをしていた。

温厚な人柄で知られる筆者だが、これにはカチンときた。カチンときたが編集部員は筆者以外、全員女性だ。付け加えるとフィナンシャルプランナーも女性だ。こちらは海外旅行情報誌から異動してきたばかりの門外漢である。明らかに劣勢で勝ち目は薄い。結局、車を手放す云々の記述だけは削除して「軽自動車やコンパクトカーなど維持費の少ない車種に乗り替えを検討しましょう」というような内容で落ち着いたが、カーガイとしてはこのような記事を世間に送り出してしまったことは誠に遺憾であり、その責任をとって自動車情報誌に異動願いを出すことにした(少し誇張)。



何の話をしているのだろう。そうか、エニカだった。つまりその時間の大半を車庫にいる愛車を貸し出すというこのサービスは、特に複数台所有をしていて、その意義について家庭内で論争が巻き起こっているカーガイにうってつけのサービスなのである。

エニカに登録したのは職業的好奇心と2CVの素晴らしさを多くの人に知ってほしいからという建前を掲げているが、せめてガレージ代くらいは稼いでもらおうか、という魂胆があったことは否定しない。この連載を通じて何度となく書いてきたように2CVは機械的なメンテナンスという意味において維持費はあまり掛からない。ヨメさんにも自分は一人だから同時に2台動くことはない。ゆえにお金は大して掛からない、という謎理論で押し通している。だから実際はガレージ、保険、自動車税などの固定費用がそれなりに掛かっていることは隠さねばならない。自動車税のお知らせが届く5月初旬は、用心深く郵便入れをチェックすることが欠かせない(ヨメさんは自動車税や保険が1台ごとにかかることに気付いていない。秘密だよ、Hらしまさん・Mりやさん)。

とはいえ、自分の愛車を貸し出すことに抵抗感のある方は多いだろう。筆者もそうだった。エニカの場合、借りる側が保険を必ず掛ける仕組みになっているものの、万が一の事故の際にどこまで修理が認められるのかなど一抹の不安はあった。それでも筆者は2017年春に2CVを登録してみた。

果たして、どんな人が2CVを借りに来るのだろう。そして愛する2CVは無事に戻ってくるのだろうか。そのあたりの顛末は次回に。



文・写真:馬弓良輔 Words & Photography: Yoshisuke MAYUMI

文・写真:馬弓良輔 Words & Photography: Yoshisuke MAYUMI

RECOMMENDEDおすすめの記事