いつまでも酔いしれたくなるような空間 フランスの老舗総合美容専門店を訪ねて

Photography: Tomonari SAKURAI

オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリーは1803年創業の総合美容専門店。19世紀に築き上げた美容と香水のその技を現代の技術でより洗練され自然由来原料を使用し肌をケアしながら芳醇で格調高い香りをもつ。パリに3店舗、ロンドンやサンフランシスコ、日本や台湾、香港にもそのブティックを世界に展開する。どのブティックも統一されたビュリーの世界観がある。製品のパッケージからブティックの雰囲気もすべてが統一されブティックに訪れることが楽しみで、またその空間にいつまでも酔いしれたくなるような、そんな世界を持つのがこのビュリーだ。

パリ3区。マレ地区のちょっと北側に位置するブティック。

 
フランスで香水がなぜ盛んになったのかもうご存じのようにお風呂に入らないフランス人の体臭を消すための手段として香水が発展した訳だがそういった類いの香水では無くこのビュリーの香水は肌を整え、その香りに包まれて幸福を感じさえするのだ。

クラシックな装いの店内は香りだけで無く視覚からも落ち着かせる。

香水を試す。目当ての香水のガラスの縁に鼻を近づかせて送気球をそっと握りこむ。するとそこに芳醇な香りが広がる。

 
香水といえば女性のためのもの。でもスキンケアとなると男性も無関係ではいられない。ビュリーは香水だけでなく、スキンケアに関して色々と展開している。特に男性のモノに目を向けるとパリで最も人気のものがシェイビングクリーム。カミソリやシェイビングブラシも用意。櫛においては髭用のものまで揃っている。櫛に関しては旅行用のモノもあるので、そっとダッシュボードに忍ばせてオープントップで走った後にさっと取り出し髪を整えて見るのも良いだろう。このブラシなどにはイニシャルなど希望の文字を入れてくれるサービスもある。

髭のお手入れなど男性用品も豊富。フランスではしっかりと男性からもビュリーは支持を得ている。

 
希望の文字を入れてくれるというサービスはそのものに愛着を感じさせる。文字にはそういった力がある。ビュリーではもう一つカリグラフィーでカードやレターを書いてくれるサービスがある。ギフトにしたときにカードやレターで気持ちをそっと添えるお手伝いをしてくれるというモノだ。カリグラフィーは簡単にいうと西洋書道。専用のペンを使って美しく書いてくれる。そのサービスができるようにビュリーのスタッフは全員がカリグラフィーを学び書くことができるというのも驚きだ。

ボーム・デ・ミューズ。保湿をするリップ・バーム。ケースに併せてレザーを選びイニシャルを施すカスタマイズが楽しい。

それだけでなくスタッフの皆さんがとても気持ちが良いのだ。言葉遣いやお喋りなどは当然だが、製品の知識もしっかりと身についている。日本のショップだと当然かも知れないがフランスではなかなか見かけなくなってしまった。しかしここにはきちんとそれが残っているのだ。


ビュリーのショップはパリに3店舗。その中でもここだけはカフェが併設されている。この空間でカフェが楽しめるというのは何とも贅沢だ。しかし待てよ、ビュリーといえども香水の匂いが立ちこめている店内。そこに香りの強いカフェが?そんな疑問が頭をよぎる。残念ながら現在フランス全土で飲食店の営業は禁止の措置が執られている。なので、ここのカフェを楽しむことは叶わない。と思っていると、「カフェを入れましょう」と声をかけてくれた。フランスのカフェといえばエスプレッソ。高圧の蒸気で一気に入れるのが現代風だが、ここではパリの伝統的なカフェの入れ方をそのまま受け継いでいる。上記の圧力ではなく、手でポンプを操作して圧を加える。ゆっくりと静かに注がれるカフェ。注ぎ終わるまでにおよそ一分。そのため「カフェ・ミニュッツ」と呼ばれていたらしい。香水の香りを押しのけて「カフェ・ミニュッツ」がやってくる。

現在営業が出来ないが特別にカフェ・ミニュッツを入れてくれた。レバーを引いて圧を加えるのだ。その圧でゆっくりとカフェが注がれていく。


現代のエスプレッソに比べややソフトな味わい。ひとくち含むとそのカフェの香りが鼻の奥から広がっていく。と同時に外側からは香水の香りがやってくる。なんとそれが重なり合って脳に届くときは何ともいえないふくよかな香りになっているのだ。正に香りのマリアージュ。こんな所までビュリーは計算しているのだ!

今回カフェを入れてくれたり、色々とお話をしてくれたオルネラさん。商品知識だけでなくビュリーの歴史まで話してくれた。彼女だけでなくスタッフの皆さんがビュリー愛にあふれているのだ。

 
撮影で来ていることを忘れてすっかりこの雰囲気を満喫していた。ふと時間を見るとビュリーの別のブティックを訪れる時間が近づいている!ここマレ地区にあるブティックから6区へ移動しなければいけない。そちらではオーナーのマダム・ヴィクトワール・ドゥ・タイヤックが待っているのだ。



つづく

Photography & Words: Tomonari SAKURAI

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