現実を超えた先にある体験価値とは│『グランツーリスモ』考案者に聞くデジタル世界の可能性

Gran Turismo Sport:TM & © Sony Interactive Entertainment Inc.



─グランツーリスモ7ではスケープスの景観素材はどのくらい収録されるんですか?

山内 正確な数字はまだ言えない段階ですが、数千の単位であることは間違いありません。

─そんなに…。じゃあ車両の種類と合わせるとバリエーションは無限になりますね。

山内 そうですね。車両は種類だけでなく色も選べますし、2台、3台と並べ置くことも出来ますから。あと、かなりクリエイティブなエフェクトも掛けられます。ユーザーの皆さんはそれを巧みに組み合わせて、僕たち作り手でさえも想像しなかったような写真を撮って公開されています。

─なるほど…。ところでグランツーリスモ・スポーツはeスポーツの先駆け的な存在としても知られていますが、今日のオンライン化というのは想像していたことですか?

山内 未来に向けてなにか出来ないかというオファーをFIAから受けたのが2013年のことでした。通信とハードの進化によってグランツーリスモをそういう土俵に乗せられるかなという手応えの中で、我々はこの先の100年のモータースポーツをドライブしよう、という趣旨でプレゼンをして両者の意向が一致した。グランツーリスモ・スポーツはそういう経緯で生まれました。でも、僕の中ではこういうかたちは、90 年代後半に1を出した時から頭の中にはあったんです。

─えっ、初代を作る時からあった?

山内 歴史を振り返ってみると、もともとモータースポーツって貴族のものだったわけじゃないですか。それが60年代の後半くらいから、車体にステッカーを貼るだけで得られるコマーシャルマネーでチームが運営できるようになった。言ってみればモータースポーツのメジャー化ですよね。そこにエンジニアリングの進化が伴って、70年代から90年代前半にかけてはF1は最高潮を迎えたわけです。この例外的な20年間を経て、今、モータースポーツは再び元の姿に戻ろうとしているように僕には見えていました。


─つまりは狭小化していると。

山内 特別な人々のためのものになりつつあるという意味で、ですけどね。たとえばル・マン24 時間のエントラントは今や半分以上がジェントルマンドライバーです。F1はアメリカズカップのようになっていくのかもしれません。そんな流れの中で、モータースポーツが広く開かれたものであり続けるためにグランツーリスモが進化していくという姿は当初からありました。だからeスポーツっていう概念は後からついてきたって感が強いですね。

文:渡辺敏史 Words:Toshifumi WATANABE  Gran Turismo Sport:TM & © Sony Interactive Entertainment Inc. Developed by Polyphony Digital Inc.

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