現実を超えた先にある体験価値とは│『グランツーリスモ』考案者に聞くデジタル世界の可能性

Gran Turismo Sport:TM & © Sony Interactive Entertainment Inc.



─それほど先鋭的なポジションに立つ一方で、山内さんはペブルビーチのコンクールデレガンスの審査員も長く務めていらっしゃいますね。

山内 11年になります。

─素朴な疑問として、審査ってどんな感じなんですか?

山内 そうですねぇ、ワンデイのイベントなのでまず朝は超早起きです(笑)。で、朝食会場に行くと席が指定されていて、テーブルごとにチーム分けがなされています。チームのメンバーは毎年ランダムですね。ある年は中村史郎さんと一緒だったり、またある年はゴードン・マーレーさんと一緒だったり。恐らくオーガナイザー側が意向の偏りがないようにしているのだと思います。で、そのチームごとに毎年異なる審査テーマを出されるわけです。「あなた方は1930年代のコンバーチブルを見てください」といった感じで。



─審査基準はどんな感じなんですか?

山内 簡単に言うとエレガンスですね(笑)。ナンバーズマッチとかオリジナルパーツとか、そういうレストレーションの領域はプロの審査チームがありますから、我々はチーム間でどれが最もエレガントかを喧々諤々と話し合う。でもって、チームとして順位付けをするわけです。

─審査員を続けていての、気付きのようなものってありましたか?

山内 初めて参加した時は、クラシックカーにはあんまり詳しくなかったこともあってか、まぁその格好よさに驚きましたね。その中でも衝撃的だったのは、自動車のデザインにおけるクリエイティブの大半がそこにあったことですね。ものすごくアバンギャルドだったりフューチャリスティックだったりということが、僕が生まれていない頃からあらかた試されていたのには本当に驚きました。

─そのように自動車の歴史を俯瞰して捉える山内さんが描く、グランツーリスモのアイデンティティとその未来はどんなものですか?

山内 具体的には言えないこともありますが、はっきり言えるのは、グランツーリスモって、日本の自動車文化が生み出したものだということです。僕自身、日本の自動車メーカーの影響力や自動車メディアの発信などに囲まれていち車好きとして育ってきたわけで、制作の原動力もそこにあります。世界的にプレイしていただいているタイトルですが、日本発であることを忘れたことは一度もありませんし、今は自分たちが日本の自動車文化を継承するという責任や使命を感じています。


文:渡辺敏史 Words:Toshifumi WATANABE  Gran Turismo Sport:TM & © Sony Interactive Entertainment Inc. Developed by Polyphony Digital Inc.

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