セレブの休日には欠かせない !? ビーチカー「ジョリー」が誕生するまで

Photography: Martyn Goddard

「準備はいいかい」小さなフィアットが丘を登りきり、くだりにさしかかる頃、エマニュエルはこう声をかけた。「さて、スピードテストをしようか」その一言で私の顔つきはプロのジャーナリストのものとなり、ドア代わりの頼りないロープを取り付け、正面のバーを両手で握り、「よし、行こう」と返した。彼がアクセルを全開で踏みこむと、スピードメーターはゆっくり50、60、70km/hと上がっていき、坂を下り切るまでに、80km/hあたりまで到達した。下り坂での参考記録だが、時速50マイル(約80.4km/h)だった。より正確にいうと時速49.7マイル(約80km/h)だ。

「これくらいにしておこう」と笑みを浮かべながら彼は告げ、ふざけた仕草で「ワープ・ファクター3(≒光速の39倍)くらいかな」と呟いた。それに対し、私は親指を立ててから、「でも、上りで追い越されたサイクリストに追いつけなかったね」と指摘する。私の言葉を手で払う仕草をしながら、彼はこう返した。「まあ、たしかにこの車は速くない。でも、さっきのサイクリストがこの楽しさを味わえるかい?それに、記事のタイトルにぴったりだ、どうだろう?『ジョリーを気ままに楽しもう』ってのは」。その言葉に答えるまで間があった私に、彼はこう言った。「イタリアでもここ以外では、知っての通り、ジョリーじゃなくてスピアッジーナか…」



こういった場所に来ると、お堅いジャーナリズム的な考えが、『気まま』に、美しいコモ湖をツーリングできる喜びを見失わせることがよくある。そのため、私は事前に歴史や背景などの情報を得ておくのが少し怖い。私たちのようなイタリア人でないイングリッシュスピーカーの大半は、戦後のフィアット・ジョリーに馴染みが深い。

この美しい街に来て、「ほら、見てみろ!太陽、砂浜、海、そして美女たち!」とでも言いたげな映画監督や、近所のビーチリゾートホテル、リビエラの地主たちから長年愛される、通り沿いのカフェのひよけとスーパーマーケットのカゴをかけあわせたような、あの車だ。お上品な休日の散歩用としては的外れであるし、普段用の交通手段としても実用的とはいえない。

Words: Dale Drinnon 訳:オクタン編集部

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