パワーはなくても魅力はたっぷり!「小さなネズミ」ジョリー

Photography: Martyn Goddard



車の性能を表す数字が重要なわけではない。アナログ時代後半のベイビーフィアットは決まって野次られるが、伝統に誇りを持っている。わずか16馬力(実際には16.3馬力)の車が、正面からの強い日ざしを克服するだけで厳しい挑戦となるだろうが、それでもスムーズで、労を厭わない車だ。

3速と4速はしっかりとシンクロし、2速はダブルデクラッチに適している。完全に停止していない限り、1速が必要となることはない。また、ペダルはかかととつま先のためのスペースが適切に確保されている。

ステアリングの反応は軽く、正確だが、この車には四輪ドラムブレーキも必要ないだろう。非常に低い馬力と最高速度はゴルフバギーと同じほどしか出ないにもかかわらず、1937年の発売からほぼ毎回ミッレ ミリアにトッポリーノが参加していることを忘れてはならない。ベイビーフィアットのファンは、大きなハンドルの後ろに滑り込んだ瞬間から心を奪われてしまう。



当たり前だが、どんなビーチカーでも見てうっとりされるより、運転されている方が良いに決まっている。それでこそ、我らが愛すべきフィアットはスーパースターになりうる。イタリア人はトッポリーノにとにかく夢中で、遂にはイタリア語でミッキーマウスとニックネームを付けてしまった。スピアッジーナの籐のシート、派手なキャンバスのふた、かわいらしい色味を付け加えれば、フェラーリのお株を奪うことができるイタリアで唯一の車となるかもしれない。湖畔のコーヒーショップからレストラン、ジェラテリアまで運転し、夏の午後を楽しむことは、濡れた髪を乾かして、デイヴィッド・ベッカムのような服装をするのにぴったりであり、大きな満足感も得られる。
 

完璧で最高の一日の締めくくりとして、様々なところで素晴らしさを再確認できたベイビーフィアットは、ライクラ素材のタイツを身につけたサイクリストを遂に追い抜いた。…といっても、彼らはコーヒーとビスコッティを楽しみ、日陰でリラックスしているところで、我々を気にする素振りは微塵も見せなかったのだけれども。

Words: Dale Drinnon   訳:オクタン編集部

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事