腕時計におけるスーパーレッジェーラの価値とは?「科学的に軽さを追求する」

ハイパフォーマンスカーの世界では、軽いことに価値がある。そういった考え方は、腕時計の世界にも広がり始めている。かつては貴金属ケースの重厚感こそが、"高級感"の証明だったが、今は軽くて快適であることが、高級時計の価値基準になりつつあるのだ。

なぜ時計を軽くする必要があるのか? 貴金属ケースの時計は重量感があるので、長時間つけていると疲れてしまう。かつての高級時計は、特別なシーンに使う"ハレの時計"だったので、多少重くても問題なかった。しかし現代は、高級SUVのようにラグジュアリーを日常使いするのが普通の時代。そういった流れの中で、高級時計であっても軽くて疲れないモノが求められるようになったのだ。
 
時計を軽くする上で最も効果的なのは、ケースやブレスレットを軽い素材で作ることである。時計界における軽量素材の先駆けは「チタン」だ。外装素材にチタンを初めて使用したのはシチズンで、1970年に世界初のチタンウォッチを発売している。軽くて錆びないチタンは、ケースがガッチリしていて大きなダイバーズウォッチに好んで用いられたが、美しく磨き上げる技術が確立されてからは、ドレッシーな時計にも用いられるようになっている。
 
最近のトレンド素材は「カーボン」だ。レーシングカーなどでもお馴染みの頑強で軽い素材だが、腕時計に使われるようになったのは、意外や2007年から。ちなみに腕時計で使用されるカーボンは、カーボンファイバーシートを積層して形を作るのではなく、カーボン素材を樹脂と混ぜ、型に入れて高温高圧で固める「フォージドカーボン」が主流。カーボンの荒々しい素材感がデザインの一つとなり、時計にタフな雰囲気を加えてくれるのだ。
 
2000年代初頭からラグジュアリー素材として定着した「セラミック」も軽い素材の代表であり、軽量素材の代名詞である「アルミニウム」を丁寧に仕上げてケース素材に使うブランドもある。いずれの素材もケースやブレスレットが軽くなるだけでなく、耐傷や耐錆などのタフな特性も有するのも魅力である。
 
どれだけ高価な時計でも、金庫の中にあったら宝の持ち腐れだ。その点で軽い時計はつけ心地に優れ、タフな特性のおかげで傷などの心配も少ない。軽量素材には、"好きな時計をいつでも使って欲しい"という時計ブランドの気持ちが詰まっているのだ。

ブレスレットまで同素材
ZENITH デファイ クラシック カーボン

ケースをカーボン素材で作ることは、今ではさほど珍しくない。しかしゼニスは、よりパーツが細かくて高い工作精度が要求されるブレスレットの駒にも、ケースと同じくカーボンを採用した。その結果、荒々しくも美しい素材感が全体に広がり、より精悍なルックスに。ちなみに全体の重さは65グラムしかない。自動巻き、カーボンケース、ケース径41㎜。215万円/ LVMH ウォッチ・ジュエリー ジャパン ゼニス TEL:03-3575-5861


アスリートのための軽量時計
OMEGA シーマスター アクアテラ"ウルトラライト"

人気ゴルファーのローリー・マキロイが、開発に参加したスポーツウォッチ。特殊合金のガンマチタンをケースなどに使用し、ムーブメントもブランド初のチタン製。そのためファブリックストラップ仕様にした場合、重さは55グラムしかない。しかもリューズがケース内部に隠れるため、アスリートの動きを邪魔しないようになっている。自動巻き、ガンマチタンケース、ケース径41 ㎜。522万円/オメガお客様センター TEL:03-5952-4400


特殊素材が作り出す男の世界
IWC SCHAFFHAUSEN パイロット・ウォッチ・ダブルクロノグラフ・トップガン・セラタニウム

IWC のために開発された特殊なチタン合金でケースを製作し、その後に炉の中で焼成すると化学変化が起きて表面がセラミック化する。これが、チタンの軽さとセラミックの耐傷性能を兼ね備える素材「セラタニウム」である。このタフな素材をスプリットセコンド式クロノグラフに採用しており、精密な計測機器にタフな迫力を加えている。自動巻き、セラタニウムケース、ケース径44㎜。156万円/ IWC シャフハウゼン TEL:0120-05-1868


あの頃の思い出が蘇る
BVRGARI ブルガリアルミニウム

1998年に誕生するや、瞬く間にアイコンウォッチとなった傑作が、現代的にアップデートして復活。最大の特徴は、マット仕上げを施したアルミニウム製のケース。金属素材ならではの力強さはあるものの、ケースは極めて軽いので腕馴染みは良好。ラバー×アルミニウムのブレスレットも継承しており、ちょっと懐かしい雰囲気がある。自動巻き、アルミニウムケース、ケース径40㎜。45万5000 円/ブルガリ ジャパン TEL:03-6362-0100

文:篠田哲生 Words:Tetsuo SHINODA

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