これもフェラーリ?現代コーチビルディングの傑作 セルジオピニンファリーナがオークションに

RM Sotheby's

自動車業界においてコーチビルディングは失われた芸術だと多くの人が考えている。自動車黎明期と戦後すぐはコーチビルディングも盛んで、富裕層はメーカーからシャシーとドライブトレインのみを購入し、コーチビルダーに依頼して自分の好みや用途に合わせてボディを構築していた。

フィゴーニエファラスキのティアドロップクーペボディワークを備えたドライエや、ギアのフィアット8Vスーパーソニックスなどは、かつて車がアートワークであったことを思い起こさせる。

時が経つにつれてコストの増加と政府の規制の厳格化により、ブルネイのスルタン国王を除いてコーチビルディングは下火になっていった。しかし一握りのメーカーや企業が、過去15年間にわたって、失われたコーチビルディングの技術を栄光の時代に戻す努力をしてきた。そのリーダーともいえるのがピニンファリーナだ。



フェラーリエンツォをベースにしたフェラーリP4/5と、612スカリエッティをベースにした612カッパから始まり、両車ともアメリカの富裕層に納車され、ピニンファリーナは現代のコーチビルディングを牽引する存在となった。ピニンファリーナに加えて、ベルトーネ、ザガート、トゥーリングスーパーレッジェーラなども、大量生産された車にデザイン・エンジニアリングともに考え抜かれた独自のコーチビルディングを施し、21世紀もコーチビルディングが十分可能であることを証明した。

すぐさまこの21世紀のコーチビルディングに注目したフェラーリは、これを特別プロジェクト部門として初めて正式に社内に持ち込んだメーカーである。

2012年にセルジオ・ピニンファリーナが亡くなった後、彼を讃えるために作られたのがフェラーリセルジオ・バイ・ピニンファリーナだ。2013年のジュネーブモーターショーで初めてコンセプトモデルが発表された。2シーターバルケッタモデルのセルジオ・バイ・ピニンファリーナがフェラーリであることは明らかだったが、ピニンファリーナがいまだに素晴らしい技術を持っていることが再び明らかになった。



当初は生産予定のないモデルであったが、458スパイダーをベースにコンセプトが作られていたこともあり、新たに製造することはそんなに難しい話ではなかった。数カ月後、幸運なごく少数のVIPカスタマーのために、ピニンファリーナとフェラーリは特別プロジェクトを通じて6台の車を生産することを決定した。458スパイダーがベースで458スペチアーレのエンジンを搭載するセルジオは、ホモロゲーションを獲得するためにセルジオコンセプトとは少し異なるエクステリアになったが、元のコンセプトモデル同様ハイセンスなのはいうまでもない。



当時のフェラーリの他のモデルには類を見ないモデルであったが、フロントガラス、インテリア、テールライトはベースに458スパイダーから変更されることはなかった。

オークションに出品されているこのセルジオは、2015年のジュネーヴ・モーターショーで実際にピニンファリーナのブースに展示されていた車だ。一般公開された最初のロードゴーイングモデルであったため、6台の中でも特別な1台となっている。ショーが終わるとスイスのオーナーに納車され、それ以来200kmしか走行していない。したがって事実上の新車状態であるといってもいいだろう。



セルジオは、セルジオピニンファリーナの生涯だけでなく、彼の会社とフェラーリのコラボレーションを祝い、彼らの過去を称えながら、明るい未来を見据えている。前述したようにこのセルジオは6台の中でも特にスペシャルな車であり、この車がガレージに加えられれば世界有数のフェラーリコレクションが完成するだろう。推定落札価格は2億円超えとなっている。


オクタン日本版編集部

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